通りすがりの俺様
「人の価値観、いろいろだよね」
といずるがロッカーで晴菜と話していると、
「お疲れ~」
と有沙がやってきた。
「今の話、もしかして、網代木?」
と言ってくる。
さっき見ていたのに気づいていたのだろう。
「私の方が引いて、終わらせてやったわ。
お姉さんだからね」
とロッカーの扉を怖い顔で見ながら、有沙が言う。
「さ、さすがです、高石さん」
となにがさすがなのかわからないが、フォローを入れておいた。
有沙はまだ扉を睨んで言う。
「……そうよ。
こんな不毛な戦いは終わらせるべきよ。
入れようと思った滅多に行かない高い洋服屋の紙袋が大きすぎたから、これに入れたらわざとらしいわねと思って、わざわざジャストサイズの紙袋をもらうために、欲しくもない二万もする帽子を買いに行ったのよ……」
何処もお姉さんでない気がしてきた……。
だが、振り向いた有沙にガッと両肩をつかまれる。
「ねえ、偉い?
ねえ、私、偉い?」
まるで、
ワタシ、キレイ?
と繰り返し訊いてくる口裂け女のように有沙は訊いてくる。
自分を納得させようとするように。
「え、偉いと思います~っ」
と言ったとき、あ、と手を離して、有沙は言った。
「そうだ。
内緒の話、聞いたのよ」