通りすがりの俺様
「うちの親がお前をご招待したいそうだ」
仕事中、廊下で一鷹と会ったいずるは、いきなり、そう言われた。
「会社の奴が勝手な動きをしてると親に教えたら、お詫びにご馳走したいと」
……私に気を使ってくださるのなら会わないでください、といずるは思ってしまう。
水内さんの親御さんとお会いするとか緊張感半端ない。
「あと、式の話も打ち合わせておきたいからと」
「いやいやいやっ。
ですから、どうして、いきなり結婚式という話になるんですかっ」
そもそも、付き合ってないですしっ、と言うと、一鷹は少し考え、
「では、デートしたり、一泊旅行に行ったりしよう」
と言い出した。
だが、たまたま横を通った一鷹の上司が、
「お前、しばらく休み取れないくらい忙しいぞ」
と言って去っていった。
「……じゃあ、家の中で一泊旅行しよう」
確かに、できそうですけどね。
なんだか知らないエレベーターまで出てきましたし。
まだ家の中に知らない空間がたくさんありそうですよ。
「そういえば、七人とその彼女は放置して大丈夫なのか?」
「ああ、どうせ、ロッカー荒らすくらいしかできない人たちですし。
あと、二人の位置情報はゲットしてるので」
といずるはスマホを見せた。
「……犯人と位置情報を交換するとは。
まあ、お前、俺ともしているが。
なんだか、犯人ごときに、俺の位置まで詰めてこられたみたいで不愉快だな」
別に犯人の七人たちは、私と親しくなりたいとは思ってないと思いますけど。
そう思いながら、とりあえず別れた。