通りすがりの俺様
 

いずるは、ただいま、と家に戻ったが。
 広い屋敷なので、返事があることはあまりない。

「ただいま帰りましたー」
ともう一度言いながら、ダイニングキッチンに向かう。

 今日は私が一番乗りかな、と思ったが、キッチンには灯りがついていた。

 いずるは、ふふ、といいことを考えた。

 あのいまいち正確性に欠ける位置情報で、誰か当ててみよう。

 少なくとも、今、家にいるのが誰かくらいはわかるだろう、と暗い廊下で立ち止まり、スマホを開いたとき、一鷹の声が聞こえてきた。

「永遠に来ないと思ってたのにな、こんな日は――。
 いずるはもう気づいているだろうが?」

 深刻な呟きに、ふと、昼間の『ミステリーやサスペンスは二転三転した方が面白い』という話が蘇る。

 どきりとしていた。

 ……まさか、やっぱり、水内さんが?

 スマホで位置情報を確認すると、家の中には一鷹と、その近くに七人がいる。

 いや、位置は相変わらずズレているので、中庭にいる感じに表示されているのだが。

 やはり、この二人はグルだったのかっ。

 身構えて次の言葉を待ったが、聞こえてこない。

 毒を食らわば皿までだっ、といずるは扉を開けた。

「お、おかえり」
と慌てて言った一鷹はなにかを隠した。

 近くに七人の姿はない。
< 282 / 307 >

この作品をシェア

pagetop