恋旅
最終日 告白~環奈~
心地よい潮風が吹き抜ける、すべての始まりの場所――海辺。
どこか切なさを孕んだ波の音だけが響く中、環奈はまっすぐに柊人を見据えて立っていた。
「柊人くん! 5日間、本当にありがとうございました」
震えを抑えるように小さく息を整え、環奈は一歩、柊人との距離を縮める。
その瞳には、これまでの想いと、強い覚悟が宿っていた。
「私……柊人くんに出会うためにこの恋旅に来たって、本気で思ってます。柊人くんに出会って、人を好きになること、恋をすることの切なさと温かさを改めて知ることができました。……柊人くんのことが大好きです! 私と付き合ってください!」
まっすぐに差し出された、すべてを捧げるような告白。
しかし、柊人はその真摯な想いを受け止めながらも、どこか苦しげに、そして申し訳なさそうに目を伏せた。
頭の中には、ずっと惹かれ合ってきた美愛の存在が鮮やかに浮かんでいた。
「環奈ちゃん……告白してくれて、本当にありがとう。すごく嬉しいよ」
一言一言を噛み締めるように、柊人は顔を上げ、真剣な瞳で環奈を見つめ返す。
「でも……ごめんなさい。俺には他に好きな人がいるから、その気持ちにこたえることはできないです」
ハッキリと告げられた拒絶の言葉。
覚悟はしていたはずなのに、胸が締め付けられるような痛みが環奈を襲う。
それでも、環奈は涙をこらえ、最後は精一杯の気丈な笑顔を作ってみせた。
「……そっか。うん、フラれちゃったね」
震える声を必死に抑えながら、環奈は柊人に向かって小さく頭を下げる。
「素敵な思い出をありがとう、柊人くん。楽しかったよ!」
そう言い残すと、これ以上涙を見せないように、環奈はくるりと背を向け、足早にその場を去っていった。
波の音が、切なく遠ざかっていく二人の運命の結末を静かに見届けていた。