恋旅

最終日 告白~優羽梨~

どこか冷たい海風が吹き抜ける、すべての始まりの場所――海辺。



砂浜の上に立ち、目の前にいる颯真を見つめる優羽梨の瞳には、これまでの迷いや葛藤を乗り越えた、切なくも強い覚悟が宿っていた。



「颯真くん……」



名前を呼ぶ声がわずかに震える。



けれど、優羽梨はしっかりと息を整え、まっすぐに颯真の目を見た。



「ずっと悩んでいたんだけど……最後の最後に、私の頭に浮かんだのは颯真くんでした。これからは、もう迷わないで、ちゃんと愛を伝えたいです。……私と、颯真くんの彼女になりたいです!」



必死に絞り出した、精一杯の愛の告白。



しかし、その言葉を聞いた颯真の表情は明るくならず、むしろ苦しげに歪んでいた。



彼は胸の奥にしまい込んでいた本当の気持ちを隠すことなく、ゆっくりと口を開く。



「優羽梨ちゃん……ありがとう。すごく嬉しかった」



一度言葉を切ると、颯真は切なそうに目を伏せ、そしてまっすぐに優羽梨を見つめ返した。



「ごめん。俺にはほかに好きな人がいます。……その人のことが好きなのに、優羽梨ちゃんと中途半端な気持ちで付き合うことはできません」



ハッキリと告げられた拒絶の言葉。



王子との間で揺れ動き、最後に颯真を選んで駆け出したはずの優羽梨の胸に、冷たい風が吹き抜ける。



あのとき、自分の気持ちを優羽梨に向けきれなかったかつての選択が、こうして跳ね返ってきたかのようだった。



それでも、優羽梨はあふれそうになる涙を必死に堪え、気丈に笑ってみせる。



「……そっか。フラれちゃったね」



震える唇をかみしめながら、優羽梨は精一杯の明るい声で告げた。



「今までありがとう、颯真くん! 楽しかったよ!」



そう言い残すと、これ以上涙を見せないように、優羽梨は背筋を伸ばしてその場を駆け出した。



崩れ落ちそうな心を必死に支えながら遠ざかっていく背中を、海風だけが寂しく見送っていた。
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