スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
プロローグ
高級感漂う黒色のセダンが、都心の夜の街を音もなく滑るように進む。
ハンドルを握るのは、獅子内北斗さん。東京と神奈川を結ぶ『大川電鉄』を基幹事業として大きくなり、今では不動産や宿泊施設などの事業も担う『オリオングループ』の御曹司だ。
ブラックタキシードのよく似合う、整った顔立ち。そのうえ言動もスマートで、本物の〝スパダリ〟とはこういう人のことをいうのだろうと思う。
私、樫江琴子はその助手席で、彼にプレゼントされたドレスに身を包み座っていた。
こんな少女漫画のようなシチュエーションにもかかわらず、私の胃はキリキリと痛んでいる。
先ほどのパーティーで、とんでもない言動をしてしまったからだ。
このままでは、彼の面子が潰れてしまう。そうなったら、オリオングループの損失は大きなものになるだろう。
そう思って反省を伝えたものの、彼は『後日、手順を踏んで訂正をする』『君が気に病む必要はない』と言う。
「俺は君を、逃がすつもりはないよ」
彼は前を向いたまま、余裕そうな王子の微笑を浮かべて今もそう言った。
だが、このままでいいわけがない。だから私は、先ほど出した結論を彼に伝えるべく、意を決して口を開く。
「もし北斗さんのご迷惑でなければ――」
そこまで言った時、車が赤信号で停まった。
彼がこちらを振り向く。目が合った。
整った鼻梁の横にバランスよく配置された、少し垂れ目の双眼。いつもは優しそうに細められているそれが、今はまるで、狙った獲物は逃がさないと言わんばかりの頑固な色を浮かべている。
だけど私は負けじと、彼に向かって告げた。
「私と、偽装結婚をしませんか?」
――まさかこの提案が彼から溺愛される未来に繋がるなんて、つゆほども思わずに。
ハンドルを握るのは、獅子内北斗さん。東京と神奈川を結ぶ『大川電鉄』を基幹事業として大きくなり、今では不動産や宿泊施設などの事業も担う『オリオングループ』の御曹司だ。
ブラックタキシードのよく似合う、整った顔立ち。そのうえ言動もスマートで、本物の〝スパダリ〟とはこういう人のことをいうのだろうと思う。
私、樫江琴子はその助手席で、彼にプレゼントされたドレスに身を包み座っていた。
こんな少女漫画のようなシチュエーションにもかかわらず、私の胃はキリキリと痛んでいる。
先ほどのパーティーで、とんでもない言動をしてしまったからだ。
このままでは、彼の面子が潰れてしまう。そうなったら、オリオングループの損失は大きなものになるだろう。
そう思って反省を伝えたものの、彼は『後日、手順を踏んで訂正をする』『君が気に病む必要はない』と言う。
「俺は君を、逃がすつもりはないよ」
彼は前を向いたまま、余裕そうな王子の微笑を浮かべて今もそう言った。
だが、このままでいいわけがない。だから私は、先ほど出した結論を彼に伝えるべく、意を決して口を開く。
「もし北斗さんのご迷惑でなければ――」
そこまで言った時、車が赤信号で停まった。
彼がこちらを振り向く。目が合った。
整った鼻梁の横にバランスよく配置された、少し垂れ目の双眼。いつもは優しそうに細められているそれが、今はまるで、狙った獲物は逃がさないと言わんばかりの頑固な色を浮かべている。
だけど私は負けじと、彼に向かって告げた。
「私と、偽装結婚をしませんか?」
――まさかこの提案が彼から溺愛される未来に繋がるなんて、つゆほども思わずに。