スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
そこまで言った時、車が赤信号で停まった。彼がこちらを振り向き、目が合う。
彼は微笑んでいるものの、その瞳はどこか獲物を逃がすまいとした鋭さを孕んでいる。私はその目をじっと見て、はっきりと彼に告げた。
「私と、偽装結婚をしませんか?」
その時、彼の目が見開かれた。やはり、迷惑だっただろうか。
「すみません、おこがましいですよね。私なんかが、御曹司である北斗さんの結婚相手になろうだなんて」
慌てて視線を逸らしてそう言うも、北斗さんは「ははっ」と声を上げて笑った。
そっと彼を振り向くと、北斗さんはもう前に向き直っていた。だけどその口角は、まだ楽しそうに上がっている。
「琴子さんは本当に、面白いな」
褒められているのだろうか。よくわからずに黙っていると、信号が青に変わる。それと同時に、北斗さんは微笑をしまって続けた。
「思い切った発想だなと思ったんだ。だけどそれは、互いに戸籍を動かすということだよ? 君の人生を、奪うことになりかねない」
彼がちらりとこちらを見る。私は真剣な顔を向ける彼に、真剣に返した。
「私、幼い頃に両親を喪っているんです。その後は伯父伯母夫婦に育ててもらったんですけど、このところ伯父はずっと私の結婚を気にしていて。伯父を安心させるためにも、早く結婚したいなと思っていたんですけど、恥ずかしながら私、就職してからは仕事ばかりで恋愛なんてしてきませんでした。それに、これからはヴィラのこともある。しばらく恋愛なんてできないと考えると――」
「俺と結婚することで、利害が一致する。それが最善だ、と考えたのか」
北斗さんはいつの間にか微笑を浮かべていた。
「はい。打算的で、申し訳ないですけれど」
言ってから、そうだと気づく。御曹司に向かって偽装結婚を提案するなんて、とんでもない。そもそも自分に、その大役が務まるのかという疑問すらある。
「それを打算的だと言うのなら、俺も同じだ。もし君と結婚したら、俺もアミューズメント事業部長への道が確実になる。上層部は〝男は結婚してこそ一人前〟という古い考えの人間が一定数いてね。俺が上の役職に就くには、結婚は必要条件なんだ。あの令嬢を黙らせるためにも、君と結婚できたらいいなとは思う」
その時、車がすっと路肩に寄った。私のマンションが、道の左側に見える。
彼はエンジンを止め、シートベルトを外した。すると私に隙を与えぬまま、こちらにぐっと身を乗り出してくる。
「だけど琴子さんは、それで本当にいいのか?」
その真剣な顔には、一片の戯れもない。
「はい。一度決めたことは、きちんとやり抜きます」
私はこくりと頷き、彼の目を見てそう告げた。
彼は微笑んでいるものの、その瞳はどこか獲物を逃がすまいとした鋭さを孕んでいる。私はその目をじっと見て、はっきりと彼に告げた。
「私と、偽装結婚をしませんか?」
その時、彼の目が見開かれた。やはり、迷惑だっただろうか。
「すみません、おこがましいですよね。私なんかが、御曹司である北斗さんの結婚相手になろうだなんて」
慌てて視線を逸らしてそう言うも、北斗さんは「ははっ」と声を上げて笑った。
そっと彼を振り向くと、北斗さんはもう前に向き直っていた。だけどその口角は、まだ楽しそうに上がっている。
「琴子さんは本当に、面白いな」
褒められているのだろうか。よくわからずに黙っていると、信号が青に変わる。それと同時に、北斗さんは微笑をしまって続けた。
「思い切った発想だなと思ったんだ。だけどそれは、互いに戸籍を動かすということだよ? 君の人生を、奪うことになりかねない」
彼がちらりとこちらを見る。私は真剣な顔を向ける彼に、真剣に返した。
「私、幼い頃に両親を喪っているんです。その後は伯父伯母夫婦に育ててもらったんですけど、このところ伯父はずっと私の結婚を気にしていて。伯父を安心させるためにも、早く結婚したいなと思っていたんですけど、恥ずかしながら私、就職してからは仕事ばかりで恋愛なんてしてきませんでした。それに、これからはヴィラのこともある。しばらく恋愛なんてできないと考えると――」
「俺と結婚することで、利害が一致する。それが最善だ、と考えたのか」
北斗さんはいつの間にか微笑を浮かべていた。
「はい。打算的で、申し訳ないですけれど」
言ってから、そうだと気づく。御曹司に向かって偽装結婚を提案するなんて、とんでもない。そもそも自分に、その大役が務まるのかという疑問すらある。
「それを打算的だと言うのなら、俺も同じだ。もし君と結婚したら、俺もアミューズメント事業部長への道が確実になる。上層部は〝男は結婚してこそ一人前〟という古い考えの人間が一定数いてね。俺が上の役職に就くには、結婚は必要条件なんだ。あの令嬢を黙らせるためにも、君と結婚できたらいいなとは思う」
その時、車がすっと路肩に寄った。私のマンションが、道の左側に見える。
彼はエンジンを止め、シートベルトを外した。すると私に隙を与えぬまま、こちらにぐっと身を乗り出してくる。
「だけど琴子さんは、それで本当にいいのか?」
その真剣な顔には、一片の戯れもない。
「はい。一度決めたことは、きちんとやり抜きます」
私はこくりと頷き、彼の目を見てそう告げた。