スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない
「先ほどのパーティーでは、ありがとう。こんなことになってしまって、申し訳なかったね」
北斗さんはすぐにそう言う。
「いえ、私もすぐに訂正していただくべきだったと、反省しておりました。まさか、こんな大事になるとは思っておらず」
言いながら思い出し、胃がキリキリと痛くなる。
だが先ほどの事態に関しては、私に責任がある。訂正しようとした北斗さんに対し、『このままで大丈夫』と言ったのは、紛れもなく私だ。
それにあの後、彼が私を婚約者として周囲にふるまってくれたのだって、私に恥をかかせないためだったのかもしれない。そう思うと、余計に気が重い。
「後日、手順を踏んで訂正をするよ。君にはクオリティ・マネージャーの仕事に専念してもらえるよう、きちんと整えるから」
「だけどそれでは、心証が悪いですよね。本当に、申し訳ございません」
ため息交じりに告げたが、彼は静かに首を横に振った。
「君が見事に立ち回ってくれたおかげで、パーティーに混乱は生じなかった。それに、あの令嬢に婚約していると嘘をついた時点で、遅かれ早かれ訂正することになっていた。俺があの令嬢に手を焼いていたことは、パーティーの出席者のほとんどが既知のはず。だから、君が気に病む必要はないよ」
だが彼の言葉に、私は視線を落とした。
もしそうだとしたら、あの場であんなふうに注目を浴び、拍手が起こるなんてことはなかったと思う。それに事態が大きくなってしまったからこそ、彼が訂正にかける時間も労力も増えてしまったと容易に想像ができる。
もし北斗さんの言うことが本当だったとしても、それは裏を返せば一部の人間は知らなかったということだ。このまま婚約を訂正したら、北斗さんに対する印象は悪くなるのは確実だろうし、オリオングループの評判だって落ちかねない。
北斗さんは再びあのご令嬢の対応をしなければならなくなるだろうし、それどころか、彼女の会社から訴えられる可能性すらある。
では、私はどうすべきなのだろう。なにが一番、得策だろうか。
私は黙ったまま顔を上げ、窓の外を見ながら考える。
ふと街路樹の向こうのショーウィンドウに、ウェディングドレスが飾られてあるのが目に留まった。ここは、ウェディングサロンだろうか。
後ろに流れてゆくそのビルを目で追い、はっとした。
誰もなにも傷つけず、荒波も立てずに丸く収まる方法が、ひとつだけ頭に浮かんだのだ。
だけど、これは彼の迷惑かもしれない。だから私は順を追って説明しようと、口を開いた。
「北斗さん個人や、オリオングループへの影響も考えたら……やはり、私が責任を取るべきだと思います」
言いながら、北斗さんを振り向く。
「俺は君を、逃がすつもりはないよ。クオリティ・マネージャーから降ろすなんて、もってのほかだ」
北斗さんは前を向いたまま、優しい笑みを浮かべてそう言った。
だけど、彼のことだ。きっと心の内で、自分が損害を被り、どうにかすればいいと考えているのだろう。
だから私は、頭の中で出した結論を、そっと口にする。
「もし北斗さんのご迷惑でなければ――」
北斗さんはすぐにそう言う。
「いえ、私もすぐに訂正していただくべきだったと、反省しておりました。まさか、こんな大事になるとは思っておらず」
言いながら思い出し、胃がキリキリと痛くなる。
だが先ほどの事態に関しては、私に責任がある。訂正しようとした北斗さんに対し、『このままで大丈夫』と言ったのは、紛れもなく私だ。
それにあの後、彼が私を婚約者として周囲にふるまってくれたのだって、私に恥をかかせないためだったのかもしれない。そう思うと、余計に気が重い。
「後日、手順を踏んで訂正をするよ。君にはクオリティ・マネージャーの仕事に専念してもらえるよう、きちんと整えるから」
「だけどそれでは、心証が悪いですよね。本当に、申し訳ございません」
ため息交じりに告げたが、彼は静かに首を横に振った。
「君が見事に立ち回ってくれたおかげで、パーティーに混乱は生じなかった。それに、あの令嬢に婚約していると嘘をついた時点で、遅かれ早かれ訂正することになっていた。俺があの令嬢に手を焼いていたことは、パーティーの出席者のほとんどが既知のはず。だから、君が気に病む必要はないよ」
だが彼の言葉に、私は視線を落とした。
もしそうだとしたら、あの場であんなふうに注目を浴び、拍手が起こるなんてことはなかったと思う。それに事態が大きくなってしまったからこそ、彼が訂正にかける時間も労力も増えてしまったと容易に想像ができる。
もし北斗さんの言うことが本当だったとしても、それは裏を返せば一部の人間は知らなかったということだ。このまま婚約を訂正したら、北斗さんに対する印象は悪くなるのは確実だろうし、オリオングループの評判だって落ちかねない。
北斗さんは再びあのご令嬢の対応をしなければならなくなるだろうし、それどころか、彼女の会社から訴えられる可能性すらある。
では、私はどうすべきなのだろう。なにが一番、得策だろうか。
私は黙ったまま顔を上げ、窓の外を見ながら考える。
ふと街路樹の向こうのショーウィンドウに、ウェディングドレスが飾られてあるのが目に留まった。ここは、ウェディングサロンだろうか。
後ろに流れてゆくそのビルを目で追い、はっとした。
誰もなにも傷つけず、荒波も立てずに丸く収まる方法が、ひとつだけ頭に浮かんだのだ。
だけど、これは彼の迷惑かもしれない。だから私は順を追って説明しようと、口を開いた。
「北斗さん個人や、オリオングループへの影響も考えたら……やはり、私が責任を取るべきだと思います」
言いながら、北斗さんを振り向く。
「俺は君を、逃がすつもりはないよ。クオリティ・マネージャーから降ろすなんて、もってのほかだ」
北斗さんは前を向いたまま、優しい笑みを浮かべてそう言った。
だけど、彼のことだ。きっと心の内で、自分が損害を被り、どうにかすればいいと考えているのだろう。
だから私は、頭の中で出した結論を、そっと口にする。
「もし北斗さんのご迷惑でなければ――」