スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない

3 偽装結婚始めました

 十一月も半ばを過ぎると、だいぶ肌寒くなる。

 私は自宅の前で、北斗さんが来るのを待っていた。今日これから互いの家に挨拶をして、婚姻届の承認の欄を記入してもらうのだ。
 婚姻届の私と北斗さんの記入欄は、あらかじめ記入済み。提出したら、私たちは晴れて夫婦となる。

 北斗さんは急遽一日の休みを取ってくれた。私もそれに合わせて仕事を休み、伯父にも紹介したい人がいると告げてある。

 厚手のトレンチコートの下は、グレージュのハイネックのニットワンピース。派手過ぎないようにイヤリングも合わせたが、これで大丈夫だろうか。
 そわそわしていると、木枯らしがぴゅっと吹きつける。思わずぎゅっと目を瞑ると、なにかがふわんと首元に回った。

「すまない、待たせてしまったね」

 目を開けると、スリーピーススーツ姿の北斗さんがそこにいた。私の首には、グレーのタータンチェック模様のマフラーが巻かれている。
 彼が巻いてくれたのだろう。スマートな所作は、彼らしい。

「マフラー、ありがとうございます」
「とんでもない。車の中は暖かいから、早く行こう」

 そう言って、彼が私に笑みを向ける。いつもと変わらないはずなのに、なんだか心の奥のほうがむず痒くなるような気がした。

 北斗さんは歩道に停めていたセダンの助手席をさっと開く。

「お邪魔します」

 そう言って乗り込むと、先日と同じくほのかに本革の匂いがする。北斗さんは運転席に座ると、カーナビを操作し始めた。

「会社に伺えばいいんだよね?」
「はい、樫江精機にお願いします」

 私がそう言い、彼が入力を終える。カーナビが案内を始め、セダンはゆっくりと道を走りだした。

 樫江精機へと向かう車の中、私は自身の生い立ちを軽く彼に話した。
 両親を亡くしてからは佐宗家にお世話になったこと、樫江精機も佐宗家が跡を継いでくれたこと。今は伯母が亡くなり、伯父が娘の莉緒ちゃんとともに会社を支えていることを告げる。

 北斗さんも樫江精機について調べてくれていたようだ。品質がよく、取引先の信頼が厚い会社であることを褒めてくれた。

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