あなたは悪魔で運命の人

「こんばんは。龍崎部長偶然ですね。鈴木さんと食事に来ていたのですが驚きました。」

「あぁ、西条さん、鈴木さん。偶然だね。」

隣の男性も笑みを浮かべて振り向いた。

「初めまして、僕は龍崎とは古い付き合いなんです。早乙女と言います。西条さんと鈴木さんだね、こんな美人なお二人が会社に居るなんて龍崎が羨ましいな。」

早乙女さんは挨拶と同時に握手の手を出した。

何時ものことだが、先に京子は握手に応じる。
笑顔で可愛い表情を作るのは京子の得意技だ。

私も京子に続き右手を出した。
その時、早乙女さんはなぜか少し驚いた表情を浮かべた。

「あっ…よ…よろしくね。鈴木さん。」

私は早乙女さんがなぜ驚いているのか不思議だったが、私もどこかで会ったことがあるような感じをかすかにしていたのだ。

挨拶を終えた龍崎部長達はカウンター席から、私達のテーブルに移動してくれた。


「それでは、改めて、美人お二人に乾杯!」

早乙女さんが明るく乾杯の挨拶をした。

京子は早乙女さんに見惚れている。

「早乙女さん、とても素敵ですね。」

浮かれている京子と対照的に龍崎部長は、少し浮かない顔をしているようにみえる。
私は龍崎部長に小声で聞いてみた。

「あ…あの…龍崎部長、どうかされましたか?」

「いや…何でもない。鈴木さん…早乙女は…。」

何かを言いかけて止めたことが気になったが、あえて深く聞いてはいけない気がした。

暫くすると、京子がお化粧直しにトイレに行くと言って席を立った。

京子と話をしていた早乙女さんは、京子から解放されて、小さくため息をついていた。
京子の攻撃に、かなり疲れているようだ。

私は申し訳ない気持ちがいっぱいになり謝った。

「早乙女さん、ごめんなさい。西条さんがずっと話していて、疲れましたよね。」

「大丈夫だよ。彼女は明るくて面白い女性だね。疲れていないよ。」

早乙女さんは優しい笑顔で応えてくれた。

しかし、早乙女さんは急に真面目な表情をして私をみた。

「鈴木さん、僕のことわかりませんか?」

何を言っているのか分からない私に、龍崎部長が話し始めた。

「僕らは、前世で双子だったんだ。早乙女は俺の弟だよ。」

(…どういうこと…何言ってるの…?)

早乙女さんは静かに話し始めた。

「兄、ルシファーは大天使だったんだ。その弟のミカエルが僕だよ。僕たちは戦う運命になったけど、元は双子の兄弟なんだ。」

(…信じられない…そんな神話みたいな話…)

「あ…あなたはミカエルの生まれ変わりなのですか?」

雰囲気は全く違うが、言われてみれば美しい顔はどこか龍崎部長と似ている気がする。

「鈴木さん、僕は偶然を装って本当はあなたに会いに来たんです。あなたの運命を伝えにね。それを、止めに入って来たのが兄なんですよ。僕は信じられなかったけど、兄の愛の深さがわかりました。あなたから今の幸せを奪いたくないそうですよ。」

「早乙女、余計な事ばかり言うな!」

早乙女さんはクスッと笑った。

「そうだ、龍崎にプレゼントがあるんだ。お前の大切な羽は治したよ、これも鈴木さんのためだったんだね。」


羽を…治す…?

どういうこと…?


心の声が聞こえたように、早乙女さんが説明を始めた。

「僕は失ったものを、もう一度再生できるんだ。兄の美しい羽根も、再生させたんだ。憎むべき敵だけど、兄であることには変わりがないからね。」


そんな…神話みたいなこと…本当にあるの…。

頭がくらくらする…。


早乙女さんは、京子が戻ってくる姿を見つけて急いで話を続けた。

「それから、龍崎が疑われているかも知れないけど、三枝物産のお嬢さんは、僕が罰を与えたんだよ。人を陥れることは許されないからね。」


「…っえ…!」


それを言い終わると、早乙女さんはいきなり立ち上がった。

「では、僕はそろそろ帰らなくちゃ。鈴木さんに会えてよかったよ。君に会って兄の気持ちも少しわかる気がしたよ。」

そこへ京子が戻ってきた。
立ち上がった早乙女さんを見て京子は寂しそうな表情をした。

「早乙女さん、もうお帰りですか…寂しいです。」

早乙女さんはクスッと笑った。

「西条さん、一緒に帰りますか?」

「えぇ…嬉しい…帰ります!」

京子は頬を赤くして大喜びだった。

早乙女さんは私達にウィンクをして見せた。
京子は満面の笑みで手をヒラヒラと動かした。

「じゃあね。恵美、悪いけど、帰るねバイバイ!」

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