あなたは悪魔で運命の人

私は思わずそのまま龍崎部長の胸に顔を埋めた。

ゆっくりした心臓の音。
どこか懐かしい。
私、この感触を覚えている。


「鈴木さん…大丈夫か?」

「…龍崎さん。」

「…飲み過ぎだぞ。」

「私…あなたのこと…覚えている。」

「…っえ?」

「あなたを…愛していたことを思い出しました。」

「…鈴木さん。少し飲みすぎて酔っているのだろう。」

「違います。」

「鈴木さん…これ以上言うと後悔するぞ。一刻の気の迷いだ。」

「今日は居なくならないでください。いつもあなたは、私を眠らせて居なくなってしまうから。」

「…それは、お前のために…」

私は龍崎部長の言葉を口づけで塞いだ。

もう止められない。
自分の気持ちに嘘はつけない。

「…恵美、何をしているんだ!」
「…龍崎さん、私は本気です。」

龍崎部長は驚いた表情をしたが、すぐに目に宿る光が変わった。

そっと重ねられた唇。

優しい口づけがじれったい。
私からすがり付くようにしてキスをした。


「…恵美、これ以上はダメだ。俺も自分が止められなくなる。」

「…お願い。止めないでください。」

「…恵美、きっと後悔するぞ。」


その時、龍崎さんの姿が変わった。

いつも夢に現れる、美しい悪魔の姿になったのだ。

背中には黒く艶やかな羽が付いている。

酔いがまわっているのかも知れない。

いや…違う…。

「恵美、俺が恐くないのか?」

「あなたの姿はいつも夢で見ていました。でも私に口づけて消えてしまうの。」

龍崎部長は優しく私頬に手を添えた。

「おいで、恵美。」

私はその声に引き寄せられるようにして、龍崎部長の腕の中に包まれた。

< 44 / 59 >

この作品をシェア

pagetop