窓ガラスの向こうにいた恋
青葉祭が終わると、園芸研究会は少しだけ落ち着きを取り戻した。けれど、休む間もなく次のイベントが待っていた。地域で毎月開催されているマルシェへの初出店。サークルでは、自分たちで育てた植物だけではなく、市場で仕入れた切り花を使ったミニブーケやミニアレンジメントも販売することとなった。大学は冬休みに入ったので、サークルのメンバーで仕入れに行くことになった。

集合時間は朝五時半。まだ夜明け前の薄暗い駅前で、私はマフラーに顔を埋めながら凪を待っていた。
五時二十五分。
まだ来ない。
(珍しいな…)
凪は明るくて少しおおざっぱなところはあるけど、待ち合わせにはほとんど遅れない。

時計を見る。
五時半。

私は少し迷ってからスマートフォンを取り出した。呼び出し音が二回鳴ったところで、勢いよく電話が繋がる。

「…もしもし⁉」

寝ぼけたような声。

「凪?大丈夫?」
「…え?今何時⁉」

ガタッ、と何かを倒す音が聞こえる。思わず笑ってしまった。

「五時半。」
「うそぉぉーー‼」

電話の向こうで慌てる気配が伝わってくる。

「ごめん!アラーム止めて二度寝した‼」
「ふふっ。気をつけて来てね。」
「十分で行く‼本当にごめん‼」

電話が切れる。駅前に一人残されて、私はくすっと笑った。
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