窓ガラスの向こうにいた恋
数日後。
農学部の新入生オリエンテーションが行われた。指定された席へ向かうと、

「あれっ⁉翡翠ちゃん!」

聞き覚えのある声が飛んできた。前の席には凪がいた。

「席ここなんだ!」
「うん!学籍番号順みたい!」

確認すると、私たちの番号はちょうど前後だった。

「これ、運命じゃない?」

そう言って笑う凪につられて、私も笑ってしまう。広い大学で偶然出会い、同じ学科で、席まで前後。そんな偶然が少しだけ嬉しかった。
オリエンテーションの合間や移動の時間、凪は気さくにたくさん話しかけてくれた。

「ねぇ、翡翠って呼んでもいい?私のことは凪って呼んで!」
「もちろん!」



その日の午後。約束通り二人で園芸研究会の体験会に向かった。
キャンパスの奥にあるガラス張りの温室。
花壇では先輩たちが土を耕し、温室には色とりどりの花が咲いていた。
澪先輩はサークルの説明をしながら言った。

「植物ってね、毎日見てると変化が分からないけど、少し時間が経ってから振り返ると、ちゃんと育っているんだよ。」

そう言って、小さな苗へ水をあげる。

(素敵な先輩だな)

そう思った。でも、それ以上ではなかった。

「サークル入る?」

帰り道、凪が聞く。

「うん。すごく楽しそうだった。」
「私も!」

顔を見合わせて笑う。こうして、私たちは『園芸研究会』へ入部した。
< 8 / 21 >

この作品をシェア

pagetop