窓ガラスの向こうにいた恋
それからの日々は、想像していた以上に楽しかった。
履修登録も似ていた私たちは、講義ではいつも隣同士。お昼休みには学食へ行き、空きコマになれば芝生で他愛ない話をして笑い合う。
気づけば凪は、大学で一番近い存在になっていた。
サークルでも、二人で一緒に水やりをしたり、植え替えをしたり、花の名前を覚えたり。
なれないことばかりだったけど、それが楽しかった。
ある日のサークル活動。澪先輩が新入生一人ひとりに、小さなハーブの鉢植えを手渡してくれた。
「翡翠ちゃん、毎日観察してみてね。お世話した分だけ、ちゃんと応えてくれるから。」
その鉢植えを、アパートの窓辺に置いて毎日大切に育てた。
少しずつ伸びる新芽を見るたびに、大学生活もゆっくり根を張り始めているようだった。
春が過ぎ、青々とした夏が訪れ、気づけば秋の風がキャンパスを吹き抜けていた。
この頃には、講義の隣には凪がいて、サークルへ行けば澪先輩や仲間がいて、大学はもう、「通う場所」ではなく、「帰ってくる場所」になっていた。
あの春の日には想像もしていなかったくらい、穏やかで暖かな日々。私は、この時間がずっと続くものだと信じていた。
あの頃の私はまだ知らなかった-
穏やかだと思っていた毎日が、ほんの少しの出来事で、二度と元には戻らないことを。