弾け跳ぶアセロラ
1. アセロラジュースがじれったい
アタシの100本目は――目の前にいるエノキ野郎に奪われた。
「ね茉菜聞いて!今日アセロラジュース飲んだら100本目なんだけど」
「ハイハイ。そりゃあ1日に2本飲む日もあるんだから100本すぐいくわよ。ホンッと由加梨ったら、そんなに飲んだって色白になったりしないわよ?」
茉菜は呆れてるけど、欠かさず飲んで溜まったキャップはアタシだけの勲章。
「そんな目的で飲んでないっての。まぁ色々。それに褐色の肌だって魅力的だし!」
「どうかしらね〜。ワタシはてっきり幼馴染の誰かさん絡みだと思ったけど」
そう言って、アタシの耳下で跳ねた毛先を整えながら茉菜は目を細めた。
「誰かさんって!とりあえずアセロラジュース買いにいってくる」
「焦んなくたって、売り切れないでしょ」
何か言われた気がしたけど終礼後、自動販売機へ駆け込んだ。
が、しかし。
「え、アセロラジュース売り切れっ!?」
アタシの声に反応してエノキ野郎は振り向いた。
「ハァ、ハァ⋯⋯あ!売り切れ?す、すみません。世良さん⋯⋯コレ、よかったら⋯⋯」
エノキ野郎は肩を大きく上下に揺らし、持っていたアセロラジュースを渡してきた。近くで見ると思ったよりも背が高い。
「あ、気にしないで!買ったのはエノ⋯⋯瑞嶋なんだから飲みなよ!」
「いや、でも」
⋯⋯あっっっぶねぇええ!エノキ野郎って言うとこだった⋯⋯。
「ホントにいいって!」
「で、でも100本目⋯⋯!」
アタシは大きな声を出した瑞嶋にびっくりして、さらに見つめてしまった。
それから色白の肌はアセロラジュースと同じくらい赤くなって、うつむいた。
「それ聞こえてたんかいっ!たまたま今日飲んだら100本目ってだけ。気にせず飲みなよ」
前髪で隠れている目をさらに手で隠した瑞嶋。そのときアタシはクラスの自己紹介を思い出した。
「瑞嶋、こ、航平です。仲良くなりたいです!せ⋯⋯じゃなくて、ら⋯⋯じゃなくて、みんなと!です」
その時も赤くなって手で顔を隠していた。
パチ、パチ、途切れる拍手⋯⋯口がポカンと開いたみんなの表情⋯⋯もうあれから1ヶ月。
「⋯⋯」
「瑞嶋ってアセロラジュースとか飲むんだ。意外。みんなと仲良くなりたいんでしょ?敬語、辞めたら」
少しだけ見える口元が緩んだ。
「⋯⋯」
「ん?」
次はギュッと口元が固くなり、大きく息を吸い込んだ。
「⋯⋯ありがとう由加梨!」
「へ?」
由加梨⋯⋯?後ろを振り向いたが、誰もいない。
アタシ⋯⋯!?だとしたら早い早い早い!タメ口を超えて下の名前!?距離の詰め方がかなりバグっている。正直引いた⋯⋯。
「⋯⋯あ」
開いた口を手で押さえる瑞嶋は、カタカタと小さく震えていた。震えたいのはアタシだって同じ。
「瑞嶋って何か変わってんだね!まっ、良かった。じゃあまた明日」
気まずくて訳わかんないことを言ってしまったアタシ。きっと顔はぎこちない。早く教室に戻ろうと振り返ったとき、呼び止める声が。
「ま、待って!」
振り向くと、大事そうにアセロラジュースを抱えた瑞嶋。揺れた前髪の隙間からまっすぐとした目が見える。
うまく言葉にはできないけど、ピカピカしていた。
「⋯⋯何?」
「ずっと言いたかったんだ!あの時、ゆ、ゆか、りが⋯⋯じゃあ」
何かを明らかに言いかけて、段差につまずきながらそそくさと消えてしまった。
「危なっ⋯⋯なんだったんだ⋯⋯」
モヤモヤしたまま教室に戻るとアタシを見て茉菜は驚いていた。
「ちょっと由加梨!アセロラジュースもしかして売り切れてたわけ?」
「エノキ野郎が最後の1本持ってった」
「由加梨またおせっかい焼いたんでしょ?⋯⋯って瑞嶋チャンと喋ったのぉおおおおおお!?」
「またって何?うん、初めて。しかもやっぱり変⋯⋯だった。喋ってて疲れるし、でも悪い奴じゃなさそう」
「ふーん。ニコニコで教室戻ってきたのよねぇ〜瑞嶋チャン!」
ニタニタしながら、茉菜はアタシの頬に指を突く。
「何それ、やっぱ変な奴」
結局アセロラジュースは飲めなかったので明日に――
⋯⋯って明日からゴールデンウィーク!
100本目のアセロラジュースはお預けとなった。
飲めないままゴールデンウィークはサッと過ぎていった。
ゴールデンウィーク明け初日。
「由加梨ゴールデンウィークはどうだった?誰かさんと!」
「おはよう茉菜。別になんもないっての。普通!いつも通り!茉菜の方こそ彼氏とは?」
「ワタシはね、か」
――ガラガラガラッ
強く開いた引き戸。
そこには立ち尽くした瑞嶋が。
教室中の視線が一気に集中する。
「⋯⋯お、おはよう!由加梨!」
「⋯⋯」
「⋯⋯え」
「「「⋯⋯えぇええええええええ!!!」」」
教室がスピーカーになったみたいに、みんなの声が響き渡った。
アタシは脊髄反射で顔をそらした!が、意味はなく視線はアタシの方へ突き刺さる⋯⋯。
もう!なんでこうなんのよぉおおおおおおお!
「ね茉菜聞いて!今日アセロラジュース飲んだら100本目なんだけど」
「ハイハイ。そりゃあ1日に2本飲む日もあるんだから100本すぐいくわよ。ホンッと由加梨ったら、そんなに飲んだって色白になったりしないわよ?」
茉菜は呆れてるけど、欠かさず飲んで溜まったキャップはアタシだけの勲章。
「そんな目的で飲んでないっての。まぁ色々。それに褐色の肌だって魅力的だし!」
「どうかしらね〜。ワタシはてっきり幼馴染の誰かさん絡みだと思ったけど」
そう言って、アタシの耳下で跳ねた毛先を整えながら茉菜は目を細めた。
「誰かさんって!とりあえずアセロラジュース買いにいってくる」
「焦んなくたって、売り切れないでしょ」
何か言われた気がしたけど終礼後、自動販売機へ駆け込んだ。
が、しかし。
「え、アセロラジュース売り切れっ!?」
アタシの声に反応してエノキ野郎は振り向いた。
「ハァ、ハァ⋯⋯あ!売り切れ?す、すみません。世良さん⋯⋯コレ、よかったら⋯⋯」
エノキ野郎は肩を大きく上下に揺らし、持っていたアセロラジュースを渡してきた。近くで見ると思ったよりも背が高い。
「あ、気にしないで!買ったのはエノ⋯⋯瑞嶋なんだから飲みなよ!」
「いや、でも」
⋯⋯あっっっぶねぇええ!エノキ野郎って言うとこだった⋯⋯。
「ホントにいいって!」
「で、でも100本目⋯⋯!」
アタシは大きな声を出した瑞嶋にびっくりして、さらに見つめてしまった。
それから色白の肌はアセロラジュースと同じくらい赤くなって、うつむいた。
「それ聞こえてたんかいっ!たまたま今日飲んだら100本目ってだけ。気にせず飲みなよ」
前髪で隠れている目をさらに手で隠した瑞嶋。そのときアタシはクラスの自己紹介を思い出した。
「瑞嶋、こ、航平です。仲良くなりたいです!せ⋯⋯じゃなくて、ら⋯⋯じゃなくて、みんなと!です」
その時も赤くなって手で顔を隠していた。
パチ、パチ、途切れる拍手⋯⋯口がポカンと開いたみんなの表情⋯⋯もうあれから1ヶ月。
「⋯⋯」
「瑞嶋ってアセロラジュースとか飲むんだ。意外。みんなと仲良くなりたいんでしょ?敬語、辞めたら」
少しだけ見える口元が緩んだ。
「⋯⋯」
「ん?」
次はギュッと口元が固くなり、大きく息を吸い込んだ。
「⋯⋯ありがとう由加梨!」
「へ?」
由加梨⋯⋯?後ろを振り向いたが、誰もいない。
アタシ⋯⋯!?だとしたら早い早い早い!タメ口を超えて下の名前!?距離の詰め方がかなりバグっている。正直引いた⋯⋯。
「⋯⋯あ」
開いた口を手で押さえる瑞嶋は、カタカタと小さく震えていた。震えたいのはアタシだって同じ。
「瑞嶋って何か変わってんだね!まっ、良かった。じゃあまた明日」
気まずくて訳わかんないことを言ってしまったアタシ。きっと顔はぎこちない。早く教室に戻ろうと振り返ったとき、呼び止める声が。
「ま、待って!」
振り向くと、大事そうにアセロラジュースを抱えた瑞嶋。揺れた前髪の隙間からまっすぐとした目が見える。
うまく言葉にはできないけど、ピカピカしていた。
「⋯⋯何?」
「ずっと言いたかったんだ!あの時、ゆ、ゆか、りが⋯⋯じゃあ」
何かを明らかに言いかけて、段差につまずきながらそそくさと消えてしまった。
「危なっ⋯⋯なんだったんだ⋯⋯」
モヤモヤしたまま教室に戻るとアタシを見て茉菜は驚いていた。
「ちょっと由加梨!アセロラジュースもしかして売り切れてたわけ?」
「エノキ野郎が最後の1本持ってった」
「由加梨またおせっかい焼いたんでしょ?⋯⋯って瑞嶋チャンと喋ったのぉおおおおおお!?」
「またって何?うん、初めて。しかもやっぱり変⋯⋯だった。喋ってて疲れるし、でも悪い奴じゃなさそう」
「ふーん。ニコニコで教室戻ってきたのよねぇ〜瑞嶋チャン!」
ニタニタしながら、茉菜はアタシの頬に指を突く。
「何それ、やっぱ変な奴」
結局アセロラジュースは飲めなかったので明日に――
⋯⋯って明日からゴールデンウィーク!
100本目のアセロラジュースはお預けとなった。
飲めないままゴールデンウィークはサッと過ぎていった。
ゴールデンウィーク明け初日。
「由加梨ゴールデンウィークはどうだった?誰かさんと!」
「おはよう茉菜。別になんもないっての。普通!いつも通り!茉菜の方こそ彼氏とは?」
「ワタシはね、か」
――ガラガラガラッ
強く開いた引き戸。
そこには立ち尽くした瑞嶋が。
教室中の視線が一気に集中する。
「⋯⋯お、おはよう!由加梨!」
「⋯⋯」
「⋯⋯え」
「「「⋯⋯えぇええええええええ!!!」」」
教室がスピーカーになったみたいに、みんなの声が響き渡った。
アタシは脊髄反射で顔をそらした!が、意味はなく視線はアタシの方へ突き刺さる⋯⋯。
もう!なんでこうなんのよぉおおおおおおお!