弾け跳ぶアセロラ

6. リーダーの定義



 さっそく、班会議が始まった。

 周りの班は、意見を出し合ってうまくいってそう。それなのに2班は⋯⋯。

 あーだこーだ言う中園。
 本を読んでいるのがバレバレな岡田。
 帰りたそうにしているちほちゃん。
 ソワソワしている瑞嶋。
 
 正直この班をまとめる自信がない。

「岡田!本読んでるのバレてるから!勇者なんだったら、もっと堂々としなさいよ!」

「え?勇者?て、照れるな⋯⋯」

「世良さーん、堂々としてたら読んでいいってことになっちゃうよー」
 
 ここで中園の余計な一言が。拳を強く握ってグッと堪える。

「た、確かに。とりあえず、照れてないで岡田はちゃんと参加して」

「はい⋯⋯」

 唇を噛みしめた岡田は、本をちゃんと机の奥にしまってくれた。

 注意したはいいものの、まだ何も進んでない。
 
「⋯⋯えっと、何したらいいんだろアタシは」

「えー、リーダーなのに何も分かってないんですか?世良さんは」

「ぐっ」

 中園にチクッと言われ、ぐうの音も出ない。

「と、とりあえず配られたプリント確認してみよう」

 ここで、副リーダーがナイスアシスト!

 チラッと見えたプリントには、『決めること』の文字が。箇条書きもしてあった。

「瑞嶋ナイス!」

 ペンを置いた瑞嶋は、プリントで顔を隠した。

 そこから少しずつみんなが喋り始めて、2班もやっと動き出す。アタシの出番はナシ。

「じゃあ行き先とか時間も決めたし、今日のところはここまでということで。決まったことは後でチャットで共有する。で、どうですか?リーダー」

「素晴らしい!なら詳しそうな中園にチャットは託した」

「え?リーダー?僕がチャットまとめんの?」

 アタシの横で、ちほちゃんが小さく手を挙げていた。

「私も、その案良いと思う。だって世良さんも、岡田君も、瑞嶋君も、チャットを使いこなせないと思うから」

「「「え」」」

 ちほちゃんの毒でアタシと瑞嶋と岡田の声がハモる。見透かされているのも恥ずかしいのに、この2人と一緒にされたことが何よりもショック。

「なら、後で僕がグループチャット作っとくから。クラスのグループチャットには入ってるよね?そこから友達追加するから」


「「「「⋯⋯入ってない」」」」


 ハモった声が4人に増えた。

「え⋯⋯そこからなの?ちょっと待って⋯⋯」
 
 中園は呆れながら、スマホをバッグから取り出し、ため息をつく。

「世良さん、マドンナから招待されてるじゃん!何で入ってないの」

「⋯⋯スマホあんま見ないし、よく分かってなかったかも」

 ちほちゃんの毒がまだ効いてるのか、みんなの顔が、より見れない。

「それと、瑞嶋君と岡田君は招待すらされてないね⋯⋯」

 瑞嶋と岡田は無言で手を取り合う。

「最後に、加藤さんは何で入ってたのに抜けてんの?」

 ちほちゃんの目が、急にスッと細くなった。

「あんまり動いてなかったから⋯⋯いいかなって」

 シーンとなる2班。瑞嶋と岡田も取り合った手を離す。アタシも握りしめてた消しゴムを、机に置いた。

「ちほちゃん!そんな悲しいこと言わないでアタシ達とまた入ろうよ」

「ううん。私はいいかな」

 微笑んでるはずなのに、悲しく見えるちほちゃん。そんなちほちゃんのプリントには、ニコちゃんマークの落書きが。

「え、ダメダメ。リーダーとして命じる!ちほちゃんは強制参加!あ、あと班のグループにも。よろしく」

「入ってない人がよく言うなー。感心するよ」
 
 中園の言葉にみんなが『その通り』と言わんばかりに相槌を打つ。それにはムッとなったが、思わず吹き出してしまった。
 
 だって、この班で初めてみんなが笑ってたから。⋯⋯恥ずかしいけど。


「ちなみにさ、中園。クラスのグループチャット?はアタシ達以外はみんな入ってんの?」

「うーん、あと招待すらされてない人がもう2人もいるな⋯⋯佐藤君と田中君かな」

「あー岡田その2と岡田その3ね!なら岡田、2人も後で招待しといて」

「由加梨、俺だけじゃなくて他の人にも?」

 困惑している瑞嶋をよそに、キラッと目を輝かせ立ち上がった岡田。

「はい、任せてください!」

 夕日が差し込んでいたせいか、ほんのちょっぴり岡田が勇者に見えた。

「なら放課後、どこかで集まってチャットグループ作ろう。そのときにチャットのやり方とか教えるから」

 今回ばかりは、中園に頭が上がらない。

「待って!放課後はバイトあるから、集まるならアタシはバイト後になっちゃうな」

「え、由加梨バイトしてたの?」

 瑞嶋のペンの動きが止まって、インクが滲む。

「まぁ最寄り駅近くのファミレスでバ」

「なら!場所はリーダーのバイト先に決定!」

「は?」

 なんのためらいもなく決める中園。やっぱりさっきのは訂正で。

「あ!よくよく考えたらアタシ今日は、遅くまでバイトだったかも⋯⋯」

「え?由加梨だって今日⋯⋯」

 さっきした話を言いそうだったので、瑞嶋に目で圧力をかける。

 が、プリントで阻止されてしまった。

「あ、19時からやるお笑い番組を家族で見るって言ってました⋯⋯」

 本当に信じらんねぇなコイツ。バカ正直にペラペラと!副リーダー失格。

「じゃあ番組は配信で見てもらうとして、集合場所は決定ね。嘘つきさんには権限ないからねー自業自得」

 勝ち誇ったような顔で中園に言われてしまった。

 働いてるところを見られたくなくて、バイト先はアタシの最寄り駅のとこにしたのに。

 なんで、みんなも離れた場所なのにオッケーなんだよ!

 ということで放課後、泣く泣く2班はアタシのバイト先に集まることに。


 
 そしてアタシは、放課後すぐに着信履歴からヒロを探した。

 

 
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