見積もりには書けないもの

エンドロール....最終話

拓大広陵vs沖縄尚学。

甲子園の決勝戦から、耳が離せなかった。

八回表、ツーアウト満塁。

一打逆転の拓大広陵。

バッターボックスは、二番キャプテン。

俺はいつものコンビニで、缶コーヒーを片手に電子タバコをふかしながら、耳を澄ませていた。

コンコン。

運転席側の窓の向こうに、芳江さんがいた。

窓を開ける。

『あれ、どうしたの?』

俺が声を掛ける。

『何サボってんだよ』

芳江さんが笑いながら言った。

『うち来なよ。野球だろ?』

俺は頷いた。

すぐに芳江さんを助手席に乗せ、車を走らせた。

『ちょっと待ってな』

芳江さんは駆け足で家に入り、テレビとエアコンをつけてくれた。

待ちきれず、俺もすぐに後を追った。

八回裏。

拓大広陵は同点に追いついたものの、ピンチを迎えていた。

県を代表して頑張っている彼らを、心から応援していた。

『踏ん張れっ……』

その時、

ピコーン。

LINEが鳴った。

美香だ。

『野球観てる?』

『言ってなかったけどね』

『うちの子の母校だよ』

メガホンを持って「頑張れ」と応援する羊のスタンプ。

そりゃー、空っぽになるか……。

なんとなく想像していたものが、少しだけ具体的になった。

ピコーン。

今度は、口元にハートのついた羊。

ピコーン。

『暑いけど、ゆうもお仕事頑張ってね』

俺は、もうハートにブレなかった。

これくらいの距離感でいい。

これくらいが、ちょうどいい。

今は、LINE友達。

たまーに、お互いLINEする。

それが今は、心地よかった。

間違いにしなかったから。

最後まで言えなかった。

『好きです』

でも、それで良かったんだ。

カキーン。

高校野球が、俺を現実へ呼び戻した。

拓大広陵が負けた……。

終わり
< 37 / 37 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
見積もりには書けないもの 続編 番外編になってます 是非合わせて読んで頂けると嬉しいです
表紙を見る 表紙を閉じる
リフォームの仕事をしながら日々感じた事 経験した事に多少のエッセンスを加えて物語にしています 同世代の方々に読んでもらえると嬉しいです
リフォームあるある短編集
yuichiro/著

総文字数/3,123

実用・エッセイ(仕事)3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
リフォーム 言葉では理解できる 内容も想像はつく でも、、悪徳業者の話も聞く 今リフォームに興味があるなら、、 ページを巡ってみてください、、

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop