『付き合ってない、たぶん』上
「蓮、お前……なんで俺らに黙って……っ」

陸が裏返った声で、絞り出すように問いかける。

「……もしかしたら俺は……学校を辞めて、上京しなきゃいけない。東京に拠点を移すことを条件にしてるからだ」

「じょ、上京って……お前、東京に行くってことかよ!? 春を置いて!?」

拓海が蓮の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで一歩詰め寄った。

「そうだ。……だから、あいつにはギリギリまで言いたくねぇんだよ」

蓮はフイッと目を逸らし、自分のスマホケースの裏側を見つめた。

そこには、あの初めてのデートの日に、

ゲームセンターの狭いブースで撮ったカップルプリが、変わらずに挟まれている。

手で顔を隠しながら、自分の頬に愛おしそうにちゅーをしてくれている、世界で一番大切な幼馴染の笑顔。

「あいつはウルトラ鈍感だけど、俺のことにだけは、変なところで敏感だ。もし今、こんな話をしたら、あいつは絶対に俺に気を使って、いつもの距離でいてくれなくなる。……本当に離れなきゃいけなくなるその瞬間まで、俺はあいつの隣で、いつもの『当たり前の日常』を過ごしたいんだ」

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