天使とケサランパサランの靴屋
 それを見たそばかすの天使は、不思議と少しだけ穏やかな表情になり、オルゴールの傷ついた羽と、自分の動かなくなった翼を、交互に愛おしそうに見つめるのでした。

 コーリャは、涙を浮かべる妻へと視線を向けます。

 そして、不器用に奏でられるオルゴールのメロディーに合わせるようにして、そっと、小さな優しい声で口ずさみました。

「ケサラン、パサラン。ケサラン、パサラン……」

 こんな絶望的な状況であるにもかかわらず、どこか抜けた夫の仕草に、妻のエレーナは思わずふっと吹き出しながら問いかけます。

「どうしたの、いきなり? その言葉、あなたは昔からよく口ずさむけれど……何かのおまじないなの?」

「これはね、東の国から伝わる不思議な伝説の言葉さ」

 コーリャは汚れを拭うこともせず、愛おしそうにオルゴールを見つめながら微笑みます。

「幸せは風に乗って、誰のもとにも平等に舞い降りるんだ。真っ白な姿をした彼女たちは、笑顔や幸せな場所が大好きだから、こうして歌に誘われて姿を現すそうだよ」

「じゃあ、どんな時でも無理をして、明るくしていろってこと?」

 少し困ったような妻の言葉に、コーリャは静かに首を振りました。
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