天使とケサランパサランの靴屋
「ううん、そうじゃない。……どんなに辛い時であっても、諦めずに『光を探し続けろ』ということじゃないかな」

 エレーナは、崩れ落ちてしまった大切な工房の向こうへと視線を移しました。

 暗くくすんだ空には、戦火の煙と混ざり合いながら灰色の雲が冷たく流れていきます。
 彼女は祈るように、静かにその歌を口ずさみ始めました。

「ケサラン、パサラン。ケサラン、パサラン……」

 そばかすの天使もまた、二人と同じように、遠くの暗い空をじっと眺めていました。

 あの日、あの窓辺で、心地よい音色に誘われて初めて耳にした、大好きなあの歌。

 かつては幸福の象徴だったその歌は今、絶望という残酷な現実の中で、傷ついた者たちの心へ静かに、深く、染み渡っていくのでした。



 ――翌朝。

 静けさの中に響く心地よい物音に、そばかすの天使はふと目を覚ましました。彼女は眠気まなこで目を擦りながら、あたりを見渡します。

 そこには、朝の光の中で、崩れ落ちた工房の瓦礫からせっせと資材を運び出しているコーリャとエレーナの姿がありました。

 天使は「一体、何をしているんだろう」と興味を惹かれ、そっと二人のそばへ近づいて覗き込みます。

 そこには、ひび割れて使えなくなった家具や、工房の外壁だったと思われる古びた木の板、たくさんの釘、そしてそれらを力強く打ち付けるための金槌が、きれいに並べられていました。
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