今日も悪魔に恋してる 〜塩対応な先輩は、絶対に好きと囁かない~
翌朝、会社に着いたあたしは、いの一番で社内メールを漁っていく。
「えーっと……どれだろう?……あ」
先日の新歓の詳細メール。
その宛先欄に、佐久間主任の名前を見つけた。
(佐久間……洸輝。こうき……かな?)
(……洸輝さん)
心の中で呼んでみただけなのに、昨日触れた唇の熱まで蘇ってきた。
「……無理っ」
「朝から何が無理なの?」
「わっ! 山根さん!?」
挨拶とともに山根さんが席に着く。
「あ……その……」
「佐久間主任の名前、こうきって読むんだよ」
「……そうなんですね」
(さくまこうき……さん)
心の中で何度も名前を呼ぶ。
それだけで、また一歩主任に近づいたみたいで高鳴った。
「ちなみに、俺の名前わかる?小鳥遊すみれさん」
山根さんが、クイズでも出すような顔で覗き込んでくる。
「もちろん!山根優さんですよね」
「俺のはすんなり口に出来るんだね」
「え?」
「さ、今日も一日頑張ろう。これ情シスの佐久間主任にお願い。新しく入る派遣さんのPCとアカウント申請」
「はいっ」
返事が、自分でも驚くほど弾んだ。
早速、佐久間主任に会えると思うと、どうしても口元が緩んでしまう。
「……なんか嬉しそうだね」
「えっ!?」
「良いことあって、良かったね」
緩みっぱなしはよくない。
気を引き締め直し、ファイルを抱え、情シス部へ急いだ。
今回は、佐久間主任に用事があるから、真っ直ぐデスクに向かう。
主任は複数のモニター画面を見ながら、キーボードを高速で叩いている。
後ろ姿だけでも、仕事に集中しているのが伝わってきた。
「お疲れさまです、佐久間主任」
「何?」
(……あれ?)
いつも置いてあるキャンディ包みのチョコレート。
昨日より、明らかに少ない。
するとヘッドホンを外した佐久間主任が、手を出した。
「寄越せ」
「はいっ」
ファイルを渡したとき、主任の首から下がっている社員証に気づいた。
名前をまじまじと見る。
「何見てんの」
「えっ!? いや、その……下の名前は、洸輝っていうんですね」
「……今さら?」
「だって主任ってずっと主任だったので!」
「ふーん」
(……洸輝さん)
「呼ばんでええから」
「声に出してません!」
「顔に出てんねん」
思わず口元を押さえる。
漆黒の瞳が何も言わず、こちらを見た。
ほんの少し、あたしは期待を寄せる。
「あっ……佐久間主任っ」
「何?」
「あたしの名前……知ってますか?」
「早よ戻れ」
ヘッドホンを付けた佐久間主任が言った。
それっきり、こちらを見ることなく作業に戻っている。
いつもの香りさえ、心なしか素っ気なく感じる。
(……やっぱり何も変わってない)
あたしは、後ろ髪を引かれる思いで、自分のフロアに戻った。
「えーっと……どれだろう?……あ」
先日の新歓の詳細メール。
その宛先欄に、佐久間主任の名前を見つけた。
(佐久間……洸輝。こうき……かな?)
(……洸輝さん)
心の中で呼んでみただけなのに、昨日触れた唇の熱まで蘇ってきた。
「……無理っ」
「朝から何が無理なの?」
「わっ! 山根さん!?」
挨拶とともに山根さんが席に着く。
「あ……その……」
「佐久間主任の名前、こうきって読むんだよ」
「……そうなんですね」
(さくまこうき……さん)
心の中で何度も名前を呼ぶ。
それだけで、また一歩主任に近づいたみたいで高鳴った。
「ちなみに、俺の名前わかる?小鳥遊すみれさん」
山根さんが、クイズでも出すような顔で覗き込んでくる。
「もちろん!山根優さんですよね」
「俺のはすんなり口に出来るんだね」
「え?」
「さ、今日も一日頑張ろう。これ情シスの佐久間主任にお願い。新しく入る派遣さんのPCとアカウント申請」
「はいっ」
返事が、自分でも驚くほど弾んだ。
早速、佐久間主任に会えると思うと、どうしても口元が緩んでしまう。
「……なんか嬉しそうだね」
「えっ!?」
「良いことあって、良かったね」
緩みっぱなしはよくない。
気を引き締め直し、ファイルを抱え、情シス部へ急いだ。
今回は、佐久間主任に用事があるから、真っ直ぐデスクに向かう。
主任は複数のモニター画面を見ながら、キーボードを高速で叩いている。
後ろ姿だけでも、仕事に集中しているのが伝わってきた。
「お疲れさまです、佐久間主任」
「何?」
(……あれ?)
いつも置いてあるキャンディ包みのチョコレート。
昨日より、明らかに少ない。
するとヘッドホンを外した佐久間主任が、手を出した。
「寄越せ」
「はいっ」
ファイルを渡したとき、主任の首から下がっている社員証に気づいた。
名前をまじまじと見る。
「何見てんの」
「えっ!? いや、その……下の名前は、洸輝っていうんですね」
「……今さら?」
「だって主任ってずっと主任だったので!」
「ふーん」
(……洸輝さん)
「呼ばんでええから」
「声に出してません!」
「顔に出てんねん」
思わず口元を押さえる。
漆黒の瞳が何も言わず、こちらを見た。
ほんの少し、あたしは期待を寄せる。
「あっ……佐久間主任っ」
「何?」
「あたしの名前……知ってますか?」
「早よ戻れ」
ヘッドホンを付けた佐久間主任が言った。
それっきり、こちらを見ることなく作業に戻っている。
いつもの香りさえ、心なしか素っ気なく感じる。
(……やっぱり何も変わってない)
あたしは、後ろ髪を引かれる思いで、自分のフロアに戻った。