今日も悪魔に恋してる 〜塩対応な先輩は、絶対に好きと囁かない~
午後からも、時間と量に追われながらも集中していた。
数字の入力が苦手なので、いつもより慎重に画面と伝票を見比べる。
かけている眼鏡のレンズを、本気でブルーライトカットにしようか悩むほど、目がしぱしぱしてきた。

「小鳥遊さん、眉間のシワ、ほぐしておいで」
「えっ?!」
「切り替えも大事だよ。一度、気分転換しておいで」  
 
山根さんの計らいで、休憩室へ向かった。

(アイスココアが売り切れてる……仕方ないか……)
   
微糖のコーヒーを一口飲むと、ほどよい苦味が疲れた頭に染み渡る。
軽く肩を回し、気持ちを切り替えて廊下へ出た。
  
(よしっ!この後も頑張ろう)

歩いていると、前から社員たちの話し声が聞こえる。

「さっき喫煙所にいた悪魔、めちゃめちゃ機嫌悪かった……」
「げっ……じゃもう今日は情シス近寄らねぇ!」
  
(また情シスの悪魔……よく聞く日だなぁ)
(あたしには関係ないけど……)   

デスクに戻ると、資料をチェックしていた山根さんが顔をあげた。

「おかえり。スッキリしたみたいだな」
「ありがとうございますっ」
「急ぎ頼みたい仕事があるから、入力終わった分だけ共有しといて」
「わかりました」

入力を終えたデータを共有しようと、社内システムを開く。
ところが、パスワードを入力してもエラーメッセージが表示された。
 
「えっ……なんで?」
 
焦って何度か試した直後、画面に〈アカウントがロックされました〉の文字が現れた。
カチカチとマウスをクリックしても、消えないメッセージに冷や汗が流れる。
 
(……どうしよう、大丈夫だよねっ?!)
  
そんなあたしに気付いた山根さんが、体を寄せてパソコンを凝視した。

「ごめん、小鳥遊さん。俺じゃ解除できない」 
「いえ、あたしのほうこそ、すみませんっ」 
「悪いけど、ノートパソコン持って、情シス行ってきてもらえる?」
「はい!」

勢いよく返事したものの、ふと我に返った。
  
(情シス……えっ……まさかの情シス?!) 

山根さんは、大丈夫、とあっさりしている。
 
「情シスに行けば、すぐ解除してもらえるよ」 
(本当に、噂どおりなのかな……)

不安と緊張を抱えたまま、その部署へ向かった。
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