今日も悪魔に恋してる 〜塩対応な先輩は、絶対に好きと囁かない~

3話 悪魔は分かりにくい

結局、タバコから戻った佐久間主任は、他部署の男性たちの席で飲んでいて、話すことはなかった。
解散するときにすれ違っただけ。
それでもまた、シトラスとタバコの匂いが、じわりと記憶に染み込んだ。  

「小鳥遊さん、先に秘書課と情シス部に届けて」

届いた備品を、注文した部署ごとに振り分けていた。
山根さんの指示のもと、台車にのせて秘書課に向かう。
 
「ありがと!すみれ」
「おつかれさま、確認よろしく」
「はーい」

手早く済ませた麻美が、受け取りの押印をする。

「まだ荷物あるのね、次は?」
「情シスだよ」
「例のっ!」
    
麻美が周りを確認したあと、コソッと耳打ちする。
 
「悪魔に泣かされないようにねっ」
「え?」
「だって新歓の対応、すみれも見たでしょ」

女性陣への対応を思い出す。
同時に、ストールのことも。

「大丈夫。……たぶん、違う気がするから」

怪訝な顔の麻美に手を振り、情シス部へ急いだ。
エレベーターに乗り、階下ボタンを押す。
乗り合わせていた男性社員が、声をかけてきた。

「お疲れさまです、もしかしてその荷物はうち——情シスですか?」
「はい、今から届けに行くところです」
「じゃあ、サーバールームにいる佐久間主任に届けてもらっていいですか?」 
「サーバールーム?」
「主任が、その備品を使う準備をしてる最中なんですよ」 
「わかりました」
 
(ん……?佐久間主任に直接?)

ポーンという到着音と「よろしく」の声に背中を押され、エレベーターを降りる。
情シスとは別の部屋にあるサーバールーム。
立ち入ることのない場所に、少しだけ緊張しながら、扉をノックした。

「返事がない……」
< 8 / 23 >

この作品をシェア

pagetop