不動産王子に求婚されたのでオタクにしてやりました

第6話 今度は怖い男がやってきた

美月はベッドに背を預けて座り、ポテトチップスを口へ放り込んだ

炭酸水を一気に飲み、大きく息を吐く

「なんなのよあれ、どういうつもりなのよ」
「私がこのアパートを大切だって言ったからって、アパート自体買っちゃうとか……」
「怜司君って絶対やばいよ」
「なんであんなに私に執着してんのよ」

少しアニメをぼーっと見てから呟いた

「まさか……ゲテモノ食い的な……」
「怜司君ってどう見てもキラキラ世界の住人よね」

また少ししてから呟いた

「さっき私の本当の姿と部屋を見たんだし」
「とっくに幻滅してくれたかも」

その時、美月のスマートフォンが短く鳴った

昨日頼んだフィギュアの配送通知かな?

美月は期待しながらスマートフォンを確認した

しかし表示されていたのは配送通知ではなく、ショートメールだった

『怜司です』
『もしよければお茶をご一緒しませんか?』
『全十二種類のコースターを集めることにした』
『一人では大変です、手伝ってください』

美月はしばらく固まってそれを見ていた

そして叫んだ

「な、なにこれ!?」
「なんで怜司君からショートメールが来るの!?」
「なんで私の携帯番号……」

そこで美月は気づいた

大家を引き継いだなら私の連絡先も知っている

美月は険しい表情をしてスマホを見る

「これって……ストーカーよね……」
「怜司君はやばいわ……絶対まともじゃない」
「助けたって言っても、ずっと昔の話だし」
「だからって、ここまでやるのって変だよ……」

またしばらくスマホを眺めてから美月は呟いた

「十二種類のコースター……」
「なんでそんなことまで……」

美月ははっとして部屋を見渡した

玄関から見える棚に、そのアニメのグッズが並んでいた

「まさか……」
「さっき見て、私が好きだと思って……調べた?」
「どうしよう……逃げなきゃ……」

その時、扉を叩く音と大声が響いてきた

「怜司! どういうつもりだ!?」
「ここにいるんだろう!?」
「出てこい!」

びくっとして美月は聞き耳を立てた

扉を開ける音と怜司の声が響いてきた

「達也か、何の用だ」

「怜司、なにをやってる!?」
「再開発の計画変更までやらせたそうだな」
「ここに住むってのはなんだ?」
「いったい何の真似だ!?」

「俺はこのアパートが気に入った」
「だからここに住む、再開発もさせん」

「ふざけるな!」
「ここの再開発は社運を賭けて仲間で力を合わせて、やっと実現できるところまで来た事業だろう!」
「なんで怜司がこんなことをやるんだよ!」
「ちゃんと説明してくれよ!」

「すまん、達也」
「これは……俺のわがままだ」
「アパートを除いた開発計画は、すでに提示してある」
「この件で責任を問われるなら、代表を降りても構わない」

達也の声が、やり場のない苛立ちに揺れた

「そこまでして、何を知りたいんだよ」
「ドブネズミみたいに地べたをはい回って、一緒にここまでやって来ただろ」
「俺には……ちゃんと説明しろよ」

「心だ」

怜司は淡々と答えた

「俺はそれを知らないままでは、これ以上前へ進めない」
「達也のおかげで、ここまで来られた」
「それなのに、自分でもうまく説明できないんだ」
「裏切って……すまない」

しばらく沈黙が続いたあと、達也が大きく息を吐いた

「あーあ、わかったよ」
「役員会でボロカスに言われるのは俺なんだからな」
「それに、怜司のわがままも、初めてってわけじゃねえしな」
「今更、怜司から離れたりしねえよ」
「終わったら連絡よこせ、それまではなんとかしとく」
「じゃあな」

「ありがとう、達也」

達也の足音が、階段のほうへ遠ざかっていく

美月は息を殺したまま、二人のやり取りを聞いていた

怜司君って、会社の仲間を裏切るようなことまでして……

私のために、このアパートを買ったの?

本当に、なんなのよ……

こんなことをされても、迷惑なだけなのに

そのとき、遠ざかっていた足音が止まった


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