不動産王子に求婚されたのでオタクにしてやりました
第5話 隣人、大家、フィアンセ候補
「な……」
美月は自分の姿を見下ろした
魔法少女のTシャツ
毛玉のついたジャージ
頭の上で適当に結んだ髪
大きな丸眼鏡
口元には、ポテトチップスの欠片までついている
「ななななな……!」
怜司は動揺する様子もなく、平然と美月を見つめていた
やがて、その視線が美月の肩越しに部屋の中へ向けられる
壁一面を埋める漫画
ガラスケースに並んだフィギュア
アニメのポスターと、大量のぬいぐるみ
「見るな!」
美月は慌てて扉を半分閉め、その陰へ体を隠した
「どうしてここにいるの!?」
「挨拶に来た」
「なんの挨拶よ!」
「隣に引っ越してきた」
「……隣?」
美月は扉の陰から顔だけを出し、怜司が示した先へ目を向けた
昨日まで空室だった隣の扉に、真新しい表札が取りつけられている
そこには、はっきりと『御堂』と書かれていた
美月は勢いよく扉を開けた
「はあ!?」
美月は口を開けたまま、怜司と隣室を交互に見た
昨夜の工事音
午後七時から午後九時までと書かれていた工事のお知らせ
すべてが一本につながった
「昨夜の工事って、まさか……」
「俺の部屋だ」
「どうして!?」
「美月が、俺には心が足りないと言ったからだ」
怜司は当然のことを説明するように続けた
「君の考える心を理解するには、近くで生活するのが最も効率的だと判断した」
「だからって、隣に引っ越してくるってどうなのよ!?」
「それと」
怜司はジャケットの内側から、一枚の書類を取り出した
「このアパートは、俺個人で買い取った」
「は?」
「売買契約と引き渡しは、今朝済ませた」
「登記の申請も済んでいる」
怜司は手にした書類を美月へ示した
「これが法務局の受領証だ」
「今朝!?」
「このアパートを怜司君が買ったの!?」
「この建物は再開発の対象からも外した」
怜司は美月をまっすぐに見つめ、少し目を細めた
「もうここを立ち退く必要はない」
「美月にとって大切な場所なら、俺が守る」
「好きなだけ、ここに住んでいい」
美月は目を見開いた
昨日、自分が口にした言葉を思い出す
まさか、私のためだけにアパートを丸ごと買ったというのだろうか
怜司は書類に続いて、一枚の名刺を差し出した
美月は震える指で名刺を受け取った
御堂不動産株式会社 代表取締役
その肩書きの下には、信じられない文字が手書きで付け加えられていた
美月荘 所有者
「み、美月荘……?」
「将来、このアパートは君の所有にしよう」
「名前も変えておいた」
「勝手に私の名前をつけないでよ!」
「君にとって大切な場所なら、君の名前がふさわしいだろう」
「ちょっと言ってる意味が分からないんだけど!」
「それから、今日から俺が新しい大家だ」
「大家!?」
怜司は持っていた紙袋を、美月へ差し出した
中には、きれいに包装された乾麺のそばが入っている
「引っ越しそばだ」
「隣人として、大家として」
怜司は、ほんのわずかに目を細めた
「そして、フィアンセ候補として、よろしく頼む」
「な……な……な……」
美月の顔が、みるみる青ざめていく
「なによそれーーーー!!」
古いアパートに、美月の悲鳴が響き渡った
美月は自分の姿を見下ろした
魔法少女のTシャツ
毛玉のついたジャージ
頭の上で適当に結んだ髪
大きな丸眼鏡
口元には、ポテトチップスの欠片までついている
「ななななな……!」
怜司は動揺する様子もなく、平然と美月を見つめていた
やがて、その視線が美月の肩越しに部屋の中へ向けられる
壁一面を埋める漫画
ガラスケースに並んだフィギュア
アニメのポスターと、大量のぬいぐるみ
「見るな!」
美月は慌てて扉を半分閉め、その陰へ体を隠した
「どうしてここにいるの!?」
「挨拶に来た」
「なんの挨拶よ!」
「隣に引っ越してきた」
「……隣?」
美月は扉の陰から顔だけを出し、怜司が示した先へ目を向けた
昨日まで空室だった隣の扉に、真新しい表札が取りつけられている
そこには、はっきりと『御堂』と書かれていた
美月は勢いよく扉を開けた
「はあ!?」
美月は口を開けたまま、怜司と隣室を交互に見た
昨夜の工事音
午後七時から午後九時までと書かれていた工事のお知らせ
すべてが一本につながった
「昨夜の工事って、まさか……」
「俺の部屋だ」
「どうして!?」
「美月が、俺には心が足りないと言ったからだ」
怜司は当然のことを説明するように続けた
「君の考える心を理解するには、近くで生活するのが最も効率的だと判断した」
「だからって、隣に引っ越してくるってどうなのよ!?」
「それと」
怜司はジャケットの内側から、一枚の書類を取り出した
「このアパートは、俺個人で買い取った」
「は?」
「売買契約と引き渡しは、今朝済ませた」
「登記の申請も済んでいる」
怜司は手にした書類を美月へ示した
「これが法務局の受領証だ」
「今朝!?」
「このアパートを怜司君が買ったの!?」
「この建物は再開発の対象からも外した」
怜司は美月をまっすぐに見つめ、少し目を細めた
「もうここを立ち退く必要はない」
「美月にとって大切な場所なら、俺が守る」
「好きなだけ、ここに住んでいい」
美月は目を見開いた
昨日、自分が口にした言葉を思い出す
まさか、私のためだけにアパートを丸ごと買ったというのだろうか
怜司は書類に続いて、一枚の名刺を差し出した
美月は震える指で名刺を受け取った
御堂不動産株式会社 代表取締役
その肩書きの下には、信じられない文字が手書きで付け加えられていた
美月荘 所有者
「み、美月荘……?」
「将来、このアパートは君の所有にしよう」
「名前も変えておいた」
「勝手に私の名前をつけないでよ!」
「君にとって大切な場所なら、君の名前がふさわしいだろう」
「ちょっと言ってる意味が分からないんだけど!」
「それから、今日から俺が新しい大家だ」
「大家!?」
怜司は持っていた紙袋を、美月へ差し出した
中には、きれいに包装された乾麺のそばが入っている
「引っ越しそばだ」
「隣人として、大家として」
怜司は、ほんのわずかに目を細めた
「そして、フィアンセ候補として、よろしく頼む」
「な……な……な……」
美月の顔が、みるみる青ざめていく
「なによそれーーーー!!」
古いアパートに、美月の悲鳴が響き渡った