僕たちの余命は、一週間で一生分
陽菜はガタガタと震える声で続けた


「私もね、半年前、夢を諦めたくなくて……あの路地裏で寿命を売って、一千万円をもらったの。でも、後から気づいちゃったんだ。芸術の夢を追いかけるには、お金が全然足りない気がするって。だから……もっともっとお金が必要なんだって、怖くなっちゃって……」


俺の頭に、今までのパズルがピタピタとハマっていく。


「じゃあ、今まで毎日遅くまで出かけてたのは……」


「……あの寿命買取屋を、ずっと探し回ってたの。売っちゃった自分の寿命を、どうにかして買い戻す方法がないか、手がかりを探すために、街中を歩き回ってたの。バイトなんて、本当はしてなかった……」


陽菜は、寿命を売った大金を持っていながら、夢の大きさゆえに「足りない」と不安になり、心を病むように買取屋を探し続けていたのだ。大雨の日にずぶ濡れで帰ってきたのも、バイトではなく、必死に男を追っていたからだった


「でもね! 朔夜に寿命を半分あげて、あと一週間ってなってから……私、本当に気づいたの。お金が足りないんじゃなくて、私に足りなかったのは、朔夜と生きる『未来』だったんだって」


陽菜は俺の胸に顔を埋めて、おいおいと泣いた。


「だから私、昨日から本当に、街の居酒屋で深夜バイトを始めたの。二人のこれからの生活費と、一生分の人生を生き抜くためのお金が必要だから! だから絶対に諦めない。一週間以内に、絶対にあの男を捕まえて、寿命を買い戻してやるんだから……!」


陽菜の涙ながらの覚悟を聞いて、俺の胸は激しく震えた。


お互いに寿命を売り、お互いに同じだけの傷を抱えて、それでも今、必死に未来を掴もうとしている


「陽菜。俺も探す。二人で生きるための、一生分の人生を、絶対に取り戻そう」


俺は陽菜を強く強く抱きしめた


隠されていた嘘がすべて明かされ、二人の絆は本当の意味で一つになった。



残された時間は、あと三日。



俺たちはタイムリミットの向こう側にある未来へ向かって、全力で走り出す決意をしたんだ。







< 38 / 58 >

この作品をシェア

pagetop