もうブチギレましたので、家出します!〜なぜか私に迫ってきた妖艶な美女は、変人引きこもりの婚約者(♂)でした!?〜
廊下の方から父の呼ぶ声が聞こえる。今日、父は急な呼び出しを受け登城していたが、帰宅したようだ。
「はい、お父様? こちらですが?」
私が調理場から廊下へ顔を出すと、父は私に気づいた。
「あぁ、セレス! 大事な話があるから、すぐにダイニングルームに来なさい!」
騙されて借金を作ってものほほんとしてるくらい、穏やかな父にしては珍しく、興奮したような表情だった。
「はい……」
(また変な、儲け話じゃなきゃいいのだけど……)
そう願いつつ、私はダイニングルームへ急いだ。
ダイニングルームには、すでに家族が集まっている。
私が席に着くと、父はそれを確認してから大きく息を吐いた。
父はテーブルの上に、書類のような物を置く。
「……実は、王家との縁談が決まった……」
「え!?」
私たちは驚きで顔を見合わせる。
「……縁談って、ニコラにですか?」
母が尋ねると、父は首を横に振った。
「いいや、セレスにだ。セレスと第三王子ルイエス殿下との縁談だ」
(は……? 私……と、第三王子……? ……だ、第三王子って、あの醜い変人引きこもりと噂の!?)
私はテーブルに手をつき、思わず立ち上がった。
「な、なんで私が!? この家はどうなるのです!? 私は長女なのですよ!?」
「ニコラがいるではないか。ニコラに婿を取らせればいいだろう。お前は王家に嫁げ」
「は……」
「あなた! お、お、王家となんて、い、一体どう、どのような経緯で……っ」
「お母様、落ち着いてくださいませ」
驚きのあまり声にならない母を、ニコラは隣で支える。
「実はお前の評判を聞いていた陛下が、是非にお前を王子妃に迎えたいとのことなんだ。うちは名門ヴェント伯爵家だ、家柄にも問題はないだろう、はははっ」
評判と聞いても、ピンとこない。今は没落寸前の貧乏伯爵令嬢としか、言われてなかったはずだ。
「……評判……とは?」
「それは、父……、先代伯爵が、自分に似ているのはセレスだと自慢していたというほどの、頭の切れるしっかり者という評判だ」
父の言葉に、思わず絶句する。
お祖父様のことは尊敬していたが、そんな余計なことを触れ回っていたとは、私は頭が痛くなった。
(う……、お祖父様のじじバカぶりが、こんなことになるなんて……っ)
「王家……と、縁談……っ、王家……」
母は目を白黒させて、今にも倒れそうだ。
「きゃあ、お姉様、すごぉい! 私たち、王家と親類になれるってこと!? ドレスも宝石も買い放題なの!?」
ニコラは興奮して飛び跳ねる。
こんな持参金も用意できないような没落寸前の伯爵家との縁談なんて、何か裏があるに違いない。
「それで、お父様。他に何か隠していることが、おありなんでしょう?」
私は冷ややかな視線を父に送る。父の額には薄っすらと汗が光る。
「まぁ、その……、ルイエス殿下は、まぁ、噂を知っての通り、少々……問題のおありの方だ。御年25を迎えられるが、縁談がまとまらなかったらしい。だからこそ、しっかり者の嫁をと、セレスに白羽の矢が立ったんだ。……ちなみに、持参金は無し。借金は……王家が肩代わりしてくれると……」
父はしどろもどろに語る。
開いた口が塞がらなかった。それって、つまり……。
(それって、売られた? 私は生贄として、王家に売られたってことですか……っ!?)
「ははは、いやぁ、めでたいではないかっ」
「王家……、王家と……縁談……っ」
「きゃあ、どんなドレスがいいかしらぁ」
興奮している家族の横で、私の体温がすうっと冷えていくのがわかる。
(……私が……今までどれだけ、この家を守るために頑張ってきたというの……っ)
もう限界だ。ブチッと何かが切れる。
(……もう、やってられませんわ! 家出してやる……っ)
私は覚悟を決め、震える手を握りしめた。
「はい、お父様? こちらですが?」
私が調理場から廊下へ顔を出すと、父は私に気づいた。
「あぁ、セレス! 大事な話があるから、すぐにダイニングルームに来なさい!」
騙されて借金を作ってものほほんとしてるくらい、穏やかな父にしては珍しく、興奮したような表情だった。
「はい……」
(また変な、儲け話じゃなきゃいいのだけど……)
そう願いつつ、私はダイニングルームへ急いだ。
ダイニングルームには、すでに家族が集まっている。
私が席に着くと、父はそれを確認してから大きく息を吐いた。
父はテーブルの上に、書類のような物を置く。
「……実は、王家との縁談が決まった……」
「え!?」
私たちは驚きで顔を見合わせる。
「……縁談って、ニコラにですか?」
母が尋ねると、父は首を横に振った。
「いいや、セレスにだ。セレスと第三王子ルイエス殿下との縁談だ」
(は……? 私……と、第三王子……? ……だ、第三王子って、あの醜い変人引きこもりと噂の!?)
私はテーブルに手をつき、思わず立ち上がった。
「な、なんで私が!? この家はどうなるのです!? 私は長女なのですよ!?」
「ニコラがいるではないか。ニコラに婿を取らせればいいだろう。お前は王家に嫁げ」
「は……」
「あなた! お、お、王家となんて、い、一体どう、どのような経緯で……っ」
「お母様、落ち着いてくださいませ」
驚きのあまり声にならない母を、ニコラは隣で支える。
「実はお前の評判を聞いていた陛下が、是非にお前を王子妃に迎えたいとのことなんだ。うちは名門ヴェント伯爵家だ、家柄にも問題はないだろう、はははっ」
評判と聞いても、ピンとこない。今は没落寸前の貧乏伯爵令嬢としか、言われてなかったはずだ。
「……評判……とは?」
「それは、父……、先代伯爵が、自分に似ているのはセレスだと自慢していたというほどの、頭の切れるしっかり者という評判だ」
父の言葉に、思わず絶句する。
お祖父様のことは尊敬していたが、そんな余計なことを触れ回っていたとは、私は頭が痛くなった。
(う……、お祖父様のじじバカぶりが、こんなことになるなんて……っ)
「王家……と、縁談……っ、王家……」
母は目を白黒させて、今にも倒れそうだ。
「きゃあ、お姉様、すごぉい! 私たち、王家と親類になれるってこと!? ドレスも宝石も買い放題なの!?」
ニコラは興奮して飛び跳ねる。
こんな持参金も用意できないような没落寸前の伯爵家との縁談なんて、何か裏があるに違いない。
「それで、お父様。他に何か隠していることが、おありなんでしょう?」
私は冷ややかな視線を父に送る。父の額には薄っすらと汗が光る。
「まぁ、その……、ルイエス殿下は、まぁ、噂を知っての通り、少々……問題のおありの方だ。御年25を迎えられるが、縁談がまとまらなかったらしい。だからこそ、しっかり者の嫁をと、セレスに白羽の矢が立ったんだ。……ちなみに、持参金は無し。借金は……王家が肩代わりしてくれると……」
父はしどろもどろに語る。
開いた口が塞がらなかった。それって、つまり……。
(それって、売られた? 私は生贄として、王家に売られたってことですか……っ!?)
「ははは、いやぁ、めでたいではないかっ」
「王家……、王家と……縁談……っ」
「きゃあ、どんなドレスがいいかしらぁ」
興奮している家族の横で、私の体温がすうっと冷えていくのがわかる。
(……私が……今までどれだけ、この家を守るために頑張ってきたというの……っ)
もう限界だ。ブチッと何かが切れる。
(……もう、やってられませんわ! 家出してやる……っ)
私は覚悟を決め、震える手を握りしめた。