沈黙のシークレット・コード

第3話:放課後の廊下、二人だけの空間



放課後、誰もいなくなった昇降口の近く。



待ち合わせたわけではないけれど、偶然を装って二人きりになった瞬間、空気の温度がフッと上がった気がした。



「夏音」



翔太郎が声をかけながら、耳の近くで指を「く」の字に曲げて近づいてきた。 ――あなたのことが好きすぎて、あなたの話をもっと聞きたい!




反則だ、そんな顔でそんな合図をされたら、さっきまでの不機嫌なんて一瞬で溶けてしまう。夏音は照れくさくなって、指をクロスさせる。 ――幸せ。



「昨日さ、不機嫌だったろ。ごめんな、他の女子と話してて」



翔太郎が気まずそうに頭をかく。夏音は目を見張り、それからふっと柔らかく微笑んだ。 ――分かってくれてるんだ。



夏音は指を鳴らすフリをした。 ――伝えたいことがある。



「なに?」



翔太郎が耳を傾ける。



夏音は周りを見渡し、誰もいないことを確認してから、そっと彼の袖を引いた。 ――服の裾をちょっと引っ張る(こっち向いて!)。



「……すき、だよ」



掠れた声だったけれど、翔太郎にはちゃんと届いたはずだ。



翔太郎の頬がみるみるうちに赤くなっていき、彼は親指と小指を立てて、右手を振った。 ――めっちゃ恥ずかしい。



その不器用な反応が愛おしくて、二人は声を殺して笑い合った。



半年という月日は、確実に二人を深く結びつけていた。

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