隣の席の佐竹くんには…

「梅沢さんは、オレのことを思って言ってくれたんでしょ?だから謝らないで」

穏やかな佐竹君の声にゆっくりと顔をあげる。

「だけど…私…」

「昨日の梅沢さんと逆だよ。オレ、梅沢さんに謝ってほしくない」

「っ…」

「むしろ感謝してるんだ。だから謝らないでほしい」

感謝…?
なぜ?

わからなくて小首を傾げると、佐竹君は苦く笑みを作った。

「ライトからオレの過去のこと聞いてるんだよね?」

佐竹君の質問に無言で頷く。

「オレ、過去のことずっと引きずってて。自分のこと責めてれば、それでいいって思ってた」

「……」

「そうすることで、ちゃんと向き合ってる気がしてたから。でも、実際は向き合うことが怖くて、逃げてただけで…なにも変わってなかった」

佐竹君は少し間を置いてから、続けた。

「気づいた時は、そこから抜け出せなくなってて…。ライトがオレに気を使ってることもわかってたけど、それでも動けなくて」

「う、ん…」

「でも梅沢さんに『自分のことも大事にしなよ』って言われた時、ホントにその通りだなって。今の自分を大事にしてなかった」

「っ…」

「周りにこんなに考えてくれてる人がいるのに、何やってんだろうって…情けなくなってさ」

ハハ…と自嘲気味に笑う佐竹君に、ギュッと胸が締め付けられる。

「逃げるんじゃなくて、どうやって進むか考えなきゃいけなかったんだよね。梅沢さんのおかげで気づくことができたんだ。だから、ありがとう」


そう言って笑う佐竹君の表情はとてもスッキリしていて、気持ちそのものが表れているようだった。


その笑顔に甘くドキッとしたけれど、それよりも安心感が大きかった。
< 112 / 283 >

この作品をシェア

pagetop