隣の席の佐竹くんには…
「梅沢さんは、オレのことを思って言ってくれたんでしょ?だから謝らないで」
穏やかな佐竹君の声にゆっくりと顔をあげる。
「だけど…私…」
「昨日の梅沢さんと逆だよ。オレ、梅沢さんに謝ってほしくない」
「っ…」
「むしろ感謝してるんだ。だから謝らないでほしい」
感謝…?
なぜ?
わからなくて小首を傾げると、佐竹君は苦く笑みを作った。
「ライトからオレの過去のこと聞いてるんだよね?」
佐竹君の質問に無言で頷く。
「オレ、過去のことずっと引きずってて。自分のこと責めてれば、それでいいって思ってた」
「……」
「そうすることで、ちゃんと向き合ってる気がしてたから。でも、実際は向き合うことが怖くて、逃げてただけで…なにも変わってなかった」
佐竹君は少し間を置いてから、続けた。
「気づいた時は、そこから抜け出せなくなってて…。ライトがオレに気を使ってることもわかってたけど、それでも動けなくて」
「う、ん…」
「でも梅沢さんに『自分のことも大事にしなよ』って言われた時、ホントにその通りだなって。今の自分を大事にしてなかった」
「っ…」
「周りにこんなに考えてくれてる人がいるのに、何やってんだろうって…情けなくなってさ」
ハハ…と自嘲気味に笑う佐竹君に、ギュッと胸が締め付けられる。
「逃げるんじゃなくて、どうやって進むか考えなきゃいけなかったんだよね。梅沢さんのおかげで気づくことができたんだ。だから、ありがとう」
そう言って笑う佐竹君の表情はとてもスッキリしていて、気持ちそのものが表れているようだった。
その笑顔に甘くドキッとしたけれど、それよりも安心感が大きかった。