隣の席の佐竹くんには…
教室へ戻る間、しばらくライトと他愛のない話をしていると、急にライトが話題を変えてきた。

「なぁ…ミツは今、恋愛とか興味ない感じ?」

…恋愛、か。

「今は考える余裕がないっていうか…戸惑いのが正直なところ」

「まぁ、たしかにな。毎日追いかけ回されてたら、そんな思考にもなれないよなぁ」

ライトは複雑そうな顔をして笑う。


…髪を切ろうと決めたあの日。

内心、少し怖かった。
周りにどんな目で見られるのか、何を言われるのか…。

だけど…

「もっと色々言われるかなって構えてたんだけど…考えすぎだったみたい」

ポロッと出た言葉に、ライトはフッと軽く笑う。

「あの頃と今は違うってことだよ」
「うん。そうだね…」

自分も。
環境も。

時が経つと、こんなにも変わるものなのか…。

「…あの頃の自分が恥ずかしい。考えが幼すぎて…」

「実際そうだろ。幼かったんだから。オレも、周りも、みんなそうだった。ミツだけじゃないよ」

「…うん」

廊下の窓から秋の空が見えた。
鱗雲は、立ち止まることなく、風が吹くままに流れながら少しずつ形を変えていく。

「色々思うことはあるけど、勇気出して髪切ったことは後悔してない。むしろ良かったって思ってる」

「うん。オレも」

「一歩踏み出すだけで、こんなに世界が変わるんだなって。今の自分を大事にしていきたいって、初めて思えた気がする」

ライトは前を向いたまま小さく頷いてくれた。

窓から差し込む秋の光を浴びた瞬間、少しだけ肩の力が抜けた。
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