隣の席の佐竹くんには…

校舎へ戻ろうと歩き出したところで、松野さんが立っていた。
いつもの自信に満ちたオーラが、今はどこにもなかった。

「松野さん……オレ」
「佐竹さん」

言葉を続けようとしたのを、松野さんが遮った。
瞳は真っ直ぐにこっちを向いている。

「私の隣にいて、笑えていましたか?」

松野さんは、必死に笑顔を作ろうとしているのか、口角の端がわずかに震えている。

期待と不安が混ざったような、複雑なその笑みを見ながら、松野さんと過ごした日々を思い返してみる。

以前なら、気づかう言葉を選んでしまっただろう。
でも、もう、そんな嘘はつかない。


「……ごめん。できなかった」

「そう……ですよね」

一瞬、静寂が落ちる。

そのまま、揺るぎない瞳を松野さんに向けていると、彼女はオレから視線を外した。
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