隣の席の佐竹くんには…
「お面も被るし、たしかにあの前髪だと練習する時大変そうー…」
そこまで言って、慌てて口元を手で覆う。
もう…この口は、また余計なことを。
へこんでいる姿に、ライトは苦笑する。
「そんな気にすんなって。普段通りで大丈夫だから」
屋上の扉を開けると、サアッと明るい日差しが差し込んできた。
心地良い風を感じながら前方を見ると、藍色の袴を着た人物が立っているのが見えた。
(佐竹君…)
前髪は、相変わらずだった。
でも——それでも、目が離せなかった。
鼓動が激しく脈を打つ。
「よう、佐竹」
「あ、ライト…と、梅沢さん?」
普段、いない人物に驚いた様子の佐竹君。
そんなことお構いなしに、佐竹君に近づいていくライトの後ろをキープしながら着いていく。
「二人ともどうしたの?」
「梅沢が暇そうにしてたから連れてきた」
「えっ…いや…」
着いてこいって言われたからきただけなのに。
暇っていうのは否定できないけど。
「梅沢さんに見られるの、なんか恥ずかしいな」
照れくさそうに佐竹君は笑う。
サラッと前髪が揺れると、一瞬だけ見えた。
佐竹君の笑った顔。
あの日、図書室で見た時と同じだった。
思わず佐竹君の顔を見入っていると、
「…あ。梅沢さん…」
そう言って、佐竹君が顔を目がけるように手を伸ばしてきた。
「な、なに?」と聞き返すより先に、佐竹君の指先が、そっとサイドの髪に触れた。