とっても優しい幼馴染が塩対応になっちゃった

溢れる思い

「ちょっと、二人ともー! そろそろ帰りのバス来るよー!」

少し離れた場所から、舞の楽しそうな声が聞こえてきた。


祥平と一緒に荷物をまとめている舞たちの背中を見送るように、春樹は「……あぁ、すぐ行く」と短く返事をした。

その場に二人きりになり、言い知れない甘い緊張感が空気を満たす。


あゆなは勇気を振り絞って、春樹の顔を見上げた。



身長145センチの視界いっぱいに、185センチの春樹の整った顔が広がる。

「あのさ、春樹くん……」


「なんだよ」


「昔みたいに、もっと優しくしてくれたっていいんだよ? 私、ずっと春樹くんが好きだったから……引っ越してからも、ずっと……」

口に出した瞬間、自分の顔がトマトのように真っ赤になるのがわかった。


心臓がうるさいほどバクバクと鳴り響く。

春樹の表情が、一瞬で凍りついたようにピクリと止まった。


そして、彼は気まずそうに目を泳がせ、耳の先まで真っ赤に染め上げながら、思わずといった様子でボソッと吐き捨てた。


「……お前が、その……『無愛想で塩対応な男子が好き』って、小5のときに言ってたからだろ……!」

「えっ……?」

あゆなは自分の耳を疑った。


小さかった頃、テレビのドラマの影響で「なんかこう、クールで塩対応な男子ってカッコよくない?」と、何気なく春樹に話した記憶がよみがえる。

「俺はずっと、お前のその好みに合わせようと必死こいてキャラ作ってたんだよ……! なのに、お前は別の男にナンパされてばかりだし、そんな露出の高い水着でフラフラするし……こっちは気が気じゃねえんだよ、バカ……!」

ぶっきらぼうだけど、愛おしさと照れくささが限界を迎えた春樹の本音。


それは、あゆなへの特大の愛情表現そのものだった。
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