僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。
あんな風に、それも大勢の人たちのなかで酷く泣き崩れたのは、生まれて初めてのことだった、と思う。
自分の力だけでは処理しきれないくらい、めまいとは違う――知っているけれど、触れてはいけないもの――腫れ物のようなもの。それが、私の世界を覆い尽くして、溺れてしまいそうだった。ただ、校長先生の話を聞いていて、少ししんどくなったくらいのことなのに。泣き叫ぶなんて子どもじみたこと、思い出せば出すほど、耳が熱くなって、次第に頬が熱を帯びていく。
そういえば、校長先生が最後に言おうとしたことって、なんだったんだろう。
事件に関することだよね、文脈からして。それなら、私は、自分の衝動性を自覚して、耐えて、最後まで聞くべきだったんじゃないか。
私は初めて、今までは自分も退屈を感じていたはずの校長先生の話を、聞きそびれたことを悔やんだ。けれど、今更聞きに戻るのもそれはそれで目立つから嫌だ。
「あの、神田先生」
教員同士なら事前共有されているかもしれない、と思った。
「校長先生が私たちに伝えたかったことって、なんだったんですか」
神田先生は天井を仰いで、しばらく考えているようだった。
「んー……。その前に、これはあくまで養護教諭としての、独断、メンタル的な配慮って意味で聞くんだけど……」
「独断? メンタル的な、配慮?」
「そう。校長もそういう意味で、最初に生徒に退出するかどうかを選ぶよう、促したんだろうけどね」
「それと同じことですか?」
「似たようなものかな、同じとまでは言い切れないかもしれないし」
「どういうことですか?」
「一言でいうと、トラウマ・インフォームド・ケアっていうところかな」
はい、これ。神田先生にそう言われて、空になったコップと物々交換されたのは、「大きなできごとがあった後に~こころやからだのために知っておいてほしいこと~" あたりまえのこと "編(※1)」と題されたパンフレットだった。
自分の力だけでは処理しきれないくらい、めまいとは違う――知っているけれど、触れてはいけないもの――腫れ物のようなもの。それが、私の世界を覆い尽くして、溺れてしまいそうだった。ただ、校長先生の話を聞いていて、少ししんどくなったくらいのことなのに。泣き叫ぶなんて子どもじみたこと、思い出せば出すほど、耳が熱くなって、次第に頬が熱を帯びていく。
そういえば、校長先生が最後に言おうとしたことって、なんだったんだろう。
事件に関することだよね、文脈からして。それなら、私は、自分の衝動性を自覚して、耐えて、最後まで聞くべきだったんじゃないか。
私は初めて、今までは自分も退屈を感じていたはずの校長先生の話を、聞きそびれたことを悔やんだ。けれど、今更聞きに戻るのもそれはそれで目立つから嫌だ。
「あの、神田先生」
教員同士なら事前共有されているかもしれない、と思った。
「校長先生が私たちに伝えたかったことって、なんだったんですか」
神田先生は天井を仰いで、しばらく考えているようだった。
「んー……。その前に、これはあくまで養護教諭としての、独断、メンタル的な配慮って意味で聞くんだけど……」
「独断? メンタル的な、配慮?」
「そう。校長もそういう意味で、最初に生徒に退出するかどうかを選ぶよう、促したんだろうけどね」
「それと同じことですか?」
「似たようなものかな、同じとまでは言い切れないかもしれないし」
「どういうことですか?」
「一言でいうと、トラウマ・インフォームド・ケアっていうところかな」
はい、これ。神田先生にそう言われて、空になったコップと物々交換されたのは、「大きなできごとがあった後に~こころやからだのために知っておいてほしいこと~" あたりまえのこと "編(※1)」と題されたパンフレットだった。