僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。
 合唱部は今日も朝練があったのか、部室のドアには鍵がかけられていないままだった。
 人が行き交う廊下や階段を走ってきた。だから、私も朋美も、二人で同じように膝に手をついて、肩を上下させ、汗が滲んだ顔を見つめ合いながら息をきらしている。

「あんた……何様のつもりなの……」

 朋美が怒りを溶かした声で訊ねてくる。その鋭い目つきに、私の目は吸い込まれそうになり、視線を床に落とした。

「何様のつもりでもないよ、ただ――」

 ハッとして、心臓が止まりかける。息の吸い方なんて考えなくてもわかるはずのことが、頭から抜けていく。
 私は、衝動のおもむくままに、無計画に、朋美をここに連れてきた。それを、初めて自覚した。

「ただ、何よ」

 朋美は、最大レベルの警戒心でいる猫のように、ひやりと冷たい、刃のような声を私に突き付ける。

「朋美と、……話がしたかった」

 私は、目の前をどんどん流れていく言葉に埋もれないように、今一番言いたい言葉を、絞って吐き出した。
 もうこのまま、自分の考えを、思いをそのまま伝えるしかない気がするから。
 ……じゃなきゃ、最後に願ったことが、叶えられない。叶うタイミングが、もう二度と、やってこない。そんな気がしてしまうから。

「うちは話すことなんかない! だいたい、もうあと半年も過ぎれば……うちらは……無関係、になるんだから」

 私だって、そんなことくらい、言われなくてもわかっている。わかっているから、だから――。

「だからだよ!」
「は?」

 朋美はきょとんとした顔を少し前に出して、変な声を出した。
 私が膝に両手をついて前かがみになっていた自分の体を正すと、朝練のときにつけていたであろうエアコンの冷気が、ほんのりと頬を撫でていった。首筋に一滴、汗が伝う。
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