僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。

「一緒に歌わせてください」

 震える声を隠すことなく、そのままの私で、みんなに願った。
 しばらく、音楽室に沈黙が流れる。気まずくなって、まずいことを言ってしまったんじゃないか、とそわそわしてくる。
 楽譜を持つ手が汗ばんで、紙がべたついてくる。

「異論がある人、挙手」

 朋美の声だった。
 私は顔を上げて、みんなを、一人ひとりの顔を見つめた。

「いいんだよ、みんな、定演のことじゃなくてもさ、ぶっちゃけな。今しかないかもよ、発散するなら」

 朋美が両手を叩いてみんなを煽る。

「じゃ、じゃあ、私から良いですか」

 後輩の一人、同じアルトパートで隣同士で練習して、歌い続けてきた女の子。その子がおそるおそる左手を挙げ、朋美に指名され、立ち上がる。

「私、朋美先輩の姉御肌っぽいところは尊敬しています。でも、正直怖いです! その点、夕夏先輩はいつも優しくて、廊下で会ったら会釈してくれました! 二人を足して二で割れば、ちょうど良くなると思います!」

 朋美が口をぽかんと開け、周りの部員があっけにとられている。
 先生が私の隣で、声をあげてゲラゲラと笑っていた。

「そうだなあ、桜木と佐々木、真逆な二人だけど、うまくやればちょうどよくなるなあ」

 他の部員もつられるように、同じようなことを言い始めた。

「ちょ、ちょっと待って! うちのことじゃなくて、夕夏のこと! 夕夏に言いたいこと言いなさいよ!」
「一緒に歌いたい気持ちは、以前お話しした通りですから、今あえて言わなくてもいいかな~って」
「もう……」

 朋美が少し嬉しげに話しながら、一つ、ためいきをついた。音楽室に全員の笑い声が響く。
 お互いに顔を見て笑顔でハイタッチする人、楽譜を抱えてそこに顔を埋めて泣いている人、私に向けて拍手を送ってくれる人、那月が朋美に「ニコイチだねぇ、ほんと、妬けちゃう」と話す姿。
 引き出しの奥にしまいこんでいたいつかの記憶が、まるで大好きな曲のイントロのように流れ始めた気がした。
 
 高校入学直後のこと。
 合唱の界隈で名の知れたこの高校で、合唱部に入ったばかりの頃、朋美と二人で固まっていた時のこと。

" 二人とも、双子みたいね "

 名前はもう忘れてしまったけれど、先輩にそう言われて、「ニコイチ」なんてあだ名も一緒に付けられたこと。
 パート分けのために一人ひとり、全員の前で歌わされたあの日、朋美が、表情筋が凝り固まってしかめ面になっていた私を笑わせようと、変顔していたこと。
 パートが別々になってしまっても、部活が終われば、二人で毎日一緒に帰ったこと。
 すべてが愛おしく思えて、私もみんなと同じように、お腹を抱えて、涙を流しながら、笑っていた。
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