僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。
 定演前最後のリハーサル後。
 休憩時間中の今、私は控室の廊下の壁にもたれかかりながら、無機質な目の前の壁を見つめていた。

 歌うことだけを考えていて、勉強がおざなりになった中学時代。
 朋美と一緒にニコイチだと呼ばれていた高校一年生の頃。

 大事な大会前に、自己中心的な考えで突っ走って、周りを巻き込んでしまったうえ、事故で居場所を失ったこと。
 大好きで、大切だと思い込んでいたはずの存在に、いじめられるようになったこと。

「もう全部どうでもいい、どうにでもなればいい」と投げ出して、すべてを諦めていたこと。

 そして――タツさんのこと。
 守りたかったのに、助けたかったのに。
 私は結局、タツさんを助けられず、最後の願いも自分の都合を優先させたこと。

 " 自分を偽らずに素直に生きて、愛されたい "
 最後に、そう願ったこと。
 
 今、その最後の願いを叶えている途中だということ。
 
 この選択が正しいかどうかなんて、今はわからない。
 ただ一つ、言い切れると思うこと。それは、私が選んだその選択の正しさがどうであれ、あの場所で私が――私たちが生きていたことは、何も、変わらないということ。
 私が、私の人生を生き続けるためには、そうであってほしいと思う。
 タツさんに出会っていなければこんなことを思うことは、きっと、ありえなかった。

 進学したら、私は、二度と人前では歌わない生活になる。そう、決めている。
 実習で忙しいと聞いている資格を取得する以上、サークルや同好会には参加している余裕がないだろうから。

「……歌い続けたかったな」 

 特定の誰に宛てるでもなく。でも、もしかしたら、将来の自分に向けて呟いたのかもしれない。
 天井を見上げながら自然と発した言葉は、私がいくら手を伸ばそうとしても、決して届きそうにない高いところへ、消えていった。
< 59 / 74 >

この作品をシェア

pagetop