僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。

「今の私が出した、≪  ≫です」

 自分の声が聞こえなかった。

 私は、何を伝えたかったんだろう。
 最後の願いを、願いではなく、宣言としたかったような気もする。

「未来の私が、今の私を見たときにどう思うか、どんな答えを出すのか、今出した答えをどう書き換えてしまうのか、全く想像できません」

 声が震える。私は顔が俯きそうになったから、その衝動を(こら)えるように奥歯を噛みしめ、観客席をまっすぐ見つめた。

「だから、私はいつか死んでしまうその瞬間に『私になれて良かった』って思えるように、私を愛して、自由に生きていきたい」

 作りもの、あるいは、誰かから借りた正解、答えじゃなくて。

「自由って、正解を何回でも、どんな風にでも書き換えられる、魔法みたいなものだと思います。

 そして、生きていくことは、きっと――自由に書き換えていく" 自分にとって "の正解を、何度も作り直していくということ。
 そのことを、たとえ、いつか忘れてしまっても思い出したタイミングが、思い出す必要がある時なんだということ。
 今はこれを結びとし、一度筆を置きたいと思います。

 最後にはなりますが、今後、芝原学院高等学校合唱部をはじめ、関わってくださる皆様全員に対し、益々のご多幸、ご健勝をお祈り申し上げます。

 本日は、本当に、本当に、ありがとうございました」

 そう締めくくり、マイクから一歩下がって、一礼した。
< 64 / 74 >

この作品をシェア

pagetop