僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。
ありえない。
そんなこと、あっていいのか。にわかには信じ難い、ありえない。
「ご遺族の許可を得たうえで、記録を読ませてもらったとき、彼の……メサイア・コンプレックスがあまりにも暴走していたこと、そのことがクライエントにあんな選択に追い詰めてしまった。私は、彼には申し訳ないけれど、そう思わざるをえなかった」
教授だけじゃないですよ、私もそう思います。
単にそう言えば済むことだと、頭ではわかりきっているのに。
まだ、何も言えない。どうしようもない虚しさが、ゆっくり、じわじわと膨らんでいく。
「彼は、クライエントに何度も『あなたが壊れないように僕が背負います』とか、『誰もわかってくれないなら、僕があなたの理解者になる』とか、しまいには『どうしてわかってくれないんですか!? 僕はこんなにもあなたを大切に思って、支えているのに!』なんて言ったみたいなの」
教授は、はぁと深くため息をついた。
私は、数年前――屋上でのこと――を静かに思い出して、言葉にしようがない気持ちに駆られて、目をきょろきょろと動かしながら両手を揉み続けることしかできなくなっていた。
数年前。タツさんと最後に話したあの日のこと。
茜色をした夕暮れの光とともに、音もなく消えていった、あの日。
教授の話に出てきた人は、どう抗おうにも過去の私を見ているようで、俯いた。靴の中で両足のつま先を丸める。。
私はその場で、ただ、教授の目の前で、自分の声を押し殺して、大粒の涙を流すことしかできなかった。