『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
午後二時を過ぎた頃。

私はようやく、自分が昼食を食べていないことに気づいた。

「……あ」

デスクの時計を見る。

十四時十二分。

完全に忘れていた。

朝。

遼河さんの昼食時間を三十分確保した本人が。

自分の昼を忘れるってどうなの。

「まあ、あとでいいか」

次の商談資料へ手を伸ばした、その時。

「何があとでだ」

もう驚かない。

……いや。

少しは驚く。

顔を上げる。

遼河さんが立っている。

「いつからそこに?」

「今」

「またですか」

「何が」

「いえ」

遼河さんの視線が、私のデスクへ落ちる。

「昼は」

「これからです」

「もう十四時過ぎだ」

「仕事に集中していて」

「自分で俺に三十分休めと言った人間が?」

痛いところを。

「私はCEOではありませんので」

「関係ない」

「次の商談資料を確認してから――」

端末へ伸ばした手を。

遼河さんが先に押さえた。

「食べてこい」

「でも」

「十五時から商談だ」

「だからこそ」

「空腹で集中力を落とす秘書はいらない」

言葉に詰まる。

今朝。

私が遼河さんへ言ったのと、ほとんど同じ理屈。

「……十五分で食べます」

「三十分」

「藤和CEO」

「自分で俺に組んだ予定だろう」

ぐうの音も出ない。

「……行ってきます」

「そうしろ」

席を立ちかけて。

ふと気づいた。

「藤和CEO」

「何だ」

「もしかして、それを言うために?」

「何が」

「私が昼食を取っていないことを確認しに来たんですか?」

一瞬。

遼河さんが黙った。

「次の資料を取りに来ただけだ」

「資料なら共有されていますよね?」

「……」

「端末から見られますよね?」

「綾乃」

「はい」

「早く行け」

逃げた。

絶対に。

「分かりました」

思わず笑いそうになる。

「行ってきます」

廊下へ出る。

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