リフォーム営業マンの小さなドキドキ短編集 エピソード3
エピソード3 第三話 『アジフライ』
話は尽きなかった。
ただ――楽しい。
あの感覚が、少しずつ蘇ってくる。
「カラン」
グラスの中の氷が鳴った。
そろそろ点検をしろ。
アイスコーヒーが、そう教えてくれた気がした。
点検を終え、美香が気にしていたリビングの建具を調整していると、キッチンから声がした。
「ゆう、ご飯食べてく時間あるの?」
「アジフライなら」
冗談混じりに答えた。
建具を調整しながら、キッチンから漂ってくる揚げ物の匂いを吸い込む。
あの日と同じ。
もう、何が出てくるのかは容易に想像できた。
「ごめん、唐揚げ」
「じゃあ、いらないか」
「えっ? あ……」
一瞬の間。
「うそ。アジフライ」
「もう、わかってたでしょ」
そう言いながら、美香は手際よく食事を用意していく。
料理がすべて並ぶ頃には、作業もちょうど終わった。
「いただきます」
席に着く。
箸を入れる。
一口食べる。
やっぱり――過去一、美味い。
アジフライって、こんなに美味かったっけ。
食後には、温かいコーヒー。
そして、パウンドケーキ。
一つひとつが、懐かしさを増していく。
味も。
空気も。
この時間も。
「ほんと……相変わらず素敵だよ」
そう思いながら、心の中で頷いた。
コーヒーを飲みながら、しばらく感傷に浸る。
そして、無意識に視線があの壁へ向いた。
アンティークな額縁。
その中に飾られたモノクロの風景画。
カウンターには、レザーの手帳。
あの時、俺が作った壁。
一年経っても、そこには何も変わらず残っていた。
キッチンから、こっちを見ながら美香が言った。
「この壁……ほんとに作って良かったよ」
「ありがとうね」
壁を見つめたまま、しばらく黙る。
そして美香が、ぽつりと言った。
「ねぇ……アジフライ好き?」
一瞬、頭の中で整理する。
「……え。好きだよ」
「特に美香のアジフライが過去一美味しいから。アジフライの中で一番好き」
質問の意図は分からなかった。
でも、質問されたことには自信満々に答えた。
すると、美香が小さく笑った。
「言って欲しかったな……」
「私も」
その言葉を聞いた瞬間、
俺は何も言えなくなった。
一年経ったのに。
たまにするLINEだけで、充分満たされていた。
そう思っていた。
「……ばか」
心の中で呟く。
俺は自問自答を繰り返しながら、壁から目を離せなくなっていた。
ただ――楽しい。
あの感覚が、少しずつ蘇ってくる。
「カラン」
グラスの中の氷が鳴った。
そろそろ点検をしろ。
アイスコーヒーが、そう教えてくれた気がした。
点検を終え、美香が気にしていたリビングの建具を調整していると、キッチンから声がした。
「ゆう、ご飯食べてく時間あるの?」
「アジフライなら」
冗談混じりに答えた。
建具を調整しながら、キッチンから漂ってくる揚げ物の匂いを吸い込む。
あの日と同じ。
もう、何が出てくるのかは容易に想像できた。
「ごめん、唐揚げ」
「じゃあ、いらないか」
「えっ? あ……」
一瞬の間。
「うそ。アジフライ」
「もう、わかってたでしょ」
そう言いながら、美香は手際よく食事を用意していく。
料理がすべて並ぶ頃には、作業もちょうど終わった。
「いただきます」
席に着く。
箸を入れる。
一口食べる。
やっぱり――過去一、美味い。
アジフライって、こんなに美味かったっけ。
食後には、温かいコーヒー。
そして、パウンドケーキ。
一つひとつが、懐かしさを増していく。
味も。
空気も。
この時間も。
「ほんと……相変わらず素敵だよ」
そう思いながら、心の中で頷いた。
コーヒーを飲みながら、しばらく感傷に浸る。
そして、無意識に視線があの壁へ向いた。
アンティークな額縁。
その中に飾られたモノクロの風景画。
カウンターには、レザーの手帳。
あの時、俺が作った壁。
一年経っても、そこには何も変わらず残っていた。
キッチンから、こっちを見ながら美香が言った。
「この壁……ほんとに作って良かったよ」
「ありがとうね」
壁を見つめたまま、しばらく黙る。
そして美香が、ぽつりと言った。
「ねぇ……アジフライ好き?」
一瞬、頭の中で整理する。
「……え。好きだよ」
「特に美香のアジフライが過去一美味しいから。アジフライの中で一番好き」
質問の意図は分からなかった。
でも、質問されたことには自信満々に答えた。
すると、美香が小さく笑った。
「言って欲しかったな……」
「私も」
その言葉を聞いた瞬間、
俺は何も言えなくなった。
一年経ったのに。
たまにするLINEだけで、充分満たされていた。
そう思っていた。
「……ばか」
心の中で呟く。
俺は自問自答を繰り返しながら、壁から目を離せなくなっていた。