死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「屋敷のことなら心配しなくていいのよ」
「そうよ! 女中たちもいるし、二、三日くらい、私とお義母様だけで大丈夫だから」
お義母様と千草さんが、ウンウンとうなずきながら口を揃えた。
「母上、しかし会社のほうも忙しく……」
「そんなの部下に任せておきなさい。あなたは働きすぎなのよ」
いつになく強い口調でそう言われ、篤志さんは苦笑いを浮かべるしかなかった。
「ふたりで温泉にでも行ってらっしゃいよ」
お義母様がそう言ってにっこりと微笑む。
こうなると、私も彼も、ふたりで旅行しない理由が他に見つからない。
「あの、えっと……」
「そうだな。……たまにはゆっくりするのも悪くないか」
篤志さんがポツリとそう言って、私へと視線を移した。
その瞳には、いつかの百合園で見たような優しい色が浮かんでいる。
「琴乃は、どこか行きたい場所はあるか?」
家族みんなの前だというのに、彼からそんなふうに尋ねられて、私は頬が熱くなるのを感じた。
「わ、私は……旦那様と一緒なら、どこでも」
しどろもどろにそう答えると、篤志さんは目を細めて小さく笑った。
「そうか。じゃあ、決まりだな」
その様子を見ていた千草さんが「もう、ふたりとも初々しいわね!」とはしゃぎ、居間には家族団らんの温かな笑い声が広がる。
からかわれて恥ずかしいはずなのに、不思議と心は満たされていた。
「そうよ! 女中たちもいるし、二、三日くらい、私とお義母様だけで大丈夫だから」
お義母様と千草さんが、ウンウンとうなずきながら口を揃えた。
「母上、しかし会社のほうも忙しく……」
「そんなの部下に任せておきなさい。あなたは働きすぎなのよ」
いつになく強い口調でそう言われ、篤志さんは苦笑いを浮かべるしかなかった。
「ふたりで温泉にでも行ってらっしゃいよ」
お義母様がそう言ってにっこりと微笑む。
こうなると、私も彼も、ふたりで旅行しない理由が他に見つからない。
「あの、えっと……」
「そうだな。……たまにはゆっくりするのも悪くないか」
篤志さんがポツリとそう言って、私へと視線を移した。
その瞳には、いつかの百合園で見たような優しい色が浮かんでいる。
「琴乃は、どこか行きたい場所はあるか?」
家族みんなの前だというのに、彼からそんなふうに尋ねられて、私は頬が熱くなるのを感じた。
「わ、私は……旦那様と一緒なら、どこでも」
しどろもどろにそう答えると、篤志さんは目を細めて小さく笑った。
「そうか。じゃあ、決まりだな」
その様子を見ていた千草さんが「もう、ふたりとも初々しいわね!」とはしゃぎ、居間には家族団らんの温かな笑い声が広がる。
からかわれて恥ずかしいはずなのに、不思議と心は満たされていた。