死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
 そして、お義母様——。
 縁側でのあの告白から少しずつ、心の奥にあった労咳への恐怖と向き合っているようだった。

 先日、お義母様は私を連れて、お祖父様のお墓参りに出かけた。
 子どものころのことを思い出したくなくて、長年足を運ぶことすらできなかったのだと、行く道すがら打ち明けてもくれた。

「お祖父様、私はようやく前を向けそうです」

 墓前でそうつぶやいたお義母様の横顔は、これまで見た中で一番穏やかだった。

 ◇◇◇

 ある日の午後、家族全員が居間に集まって、庭で採れた柿を食べていたときのことだった。

「そういえば、篤志と琴乃さんは、まだ新婚旅行に行っていないのよね?」

 お茶を飲みながら、お義母様が突然そんなことを言い出した。

「え……」

 思いがけない話題に、私は口に運びかけていた湯呑みを止めてしまう。
 隣に座っていた篤志さんも、珍しく言葉に詰まっているようだ。

「お兄様! いつも仕事仕事で、お義姉様をどこにも連れて行ってあげてないじゃない」

 千草さんが私と篤志さんを交互に見て、頬を膨らませながら加勢する。
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