王妃になりたくない大聖女は、今日も婚約者から逃亡する
ぽかんとした表情でつぶやく兄に、私は勢いよく抗議した。
「それ以外になにがあるっていうの!? だって王妃になったら、もう木登りも釣りも自由にできなくなってしまうじゃない!」
「いや、それは大聖女じゃなくても公爵令嬢なんだからやめた方がいいと思うけれど……。俺はてっきり、大聖女になったら騎士になれないからショックを受けているものだと」
「騎士に……なれない……?」
私が目を見開きながらそう溢すと、神官長は腰を抜かしたままの姿でゴホン!と咳払いをした。
「当たり前でございます。大聖女様のお仕事は、王太子殿下と婚約して王妃教育を受けるだけでなく……王国の教会で、毎日祈りを捧げることなのですから」
「……へ? じゃ、じゃあ、鍛錬の時間は……」
「ございません。そもそも、大聖女様のお姿を人々の前で簡単に晒すわけにはいけませんから。これから大聖女様には、王宮の中で暮らしていただきます」
「な、なんですって……!? ってことは、私はこれから一生、この教会と城の中に閉じこもって生きていかなきゃいけないの……!?」
私が衝撃を受けていると、神官たちが焦ったようにフォローに入る。
「で、ですが大聖女様! 王妃教育は大変ですが、美味しいものがたくさん食べられますよ!」
「今だって十分食べられているわ!」
「そ、それにほら! 王太子殿下はイケメンですし!」
「だから私は、そもそも結婚に興味がないんだってば! 第一その……王太子殿下の顔も覚えていないし……」
「大聖女様! 綺麗なドレスも宝石も買い放題ですよ!」
「宝石を買うお金があったら民を豊かにすることに使うわ! そもそもいきなり大聖女って言われても、私今までそんな魔法?みたいなもの、使えたことがないし……」
私がそう言うと、今まで父と騒いでいた母が突然呆れた顔になった。
「聖女の力が発現するのは、十七歳の誕生日を迎えてからよ? 家庭教師に何度も教わっているはずよ! フィオレリアったら、どうせ鍛錬に夢中で話を聞いていなかったんでしょう?」
「うっ……そ、そうなのね……」
周りの神官たちが、母の言葉にうんうんと頷く。
どうやらこの場に私の味方はいないようだ。
「では大聖女様、早速ですが、今後の話をいたしましょう。ゲストルームにご案内します。こちらへどうぞ」
神官の一人が、ニコニコとした穏やかな笑みでそう言いながら、聖堂の重厚で大きい扉を開ける。
私は、その神官のもとへ勢いよく駆け寄って____全力で聖堂から逃げ出した。
三十六計逃げるに如かずよ。
「え、だ、大聖女様!?」
「ごめんなさい! 私には無理です! このまま実家に帰らせていただきます!!」
「実家に帰っても逃げ場はないんじゃ……」
後ろを振り返りながらそう叫んで、前も見ずに全速力で走る。兄がなんか言っているけれど気にしない。
神官たちが慌てて追いかけてくるけれど、日々鍛錬をしている私の足には適わない。
このままなら逃げ切れる……と思った、その直後だった。
____ドンッ!
「きゃっ……!?」
「うわっ!?」
……曲がり角から突如現れた男性にぶつかった私は……。
____思いきり、その男性を押し倒してしまったのだった。
「それ以外になにがあるっていうの!? だって王妃になったら、もう木登りも釣りも自由にできなくなってしまうじゃない!」
「いや、それは大聖女じゃなくても公爵令嬢なんだからやめた方がいいと思うけれど……。俺はてっきり、大聖女になったら騎士になれないからショックを受けているものだと」
「騎士に……なれない……?」
私が目を見開きながらそう溢すと、神官長は腰を抜かしたままの姿でゴホン!と咳払いをした。
「当たり前でございます。大聖女様のお仕事は、王太子殿下と婚約して王妃教育を受けるだけでなく……王国の教会で、毎日祈りを捧げることなのですから」
「……へ? じゃ、じゃあ、鍛錬の時間は……」
「ございません。そもそも、大聖女様のお姿を人々の前で簡単に晒すわけにはいけませんから。これから大聖女様には、王宮の中で暮らしていただきます」
「な、なんですって……!? ってことは、私はこれから一生、この教会と城の中に閉じこもって生きていかなきゃいけないの……!?」
私が衝撃を受けていると、神官たちが焦ったようにフォローに入る。
「で、ですが大聖女様! 王妃教育は大変ですが、美味しいものがたくさん食べられますよ!」
「今だって十分食べられているわ!」
「そ、それにほら! 王太子殿下はイケメンですし!」
「だから私は、そもそも結婚に興味がないんだってば! 第一その……王太子殿下の顔も覚えていないし……」
「大聖女様! 綺麗なドレスも宝石も買い放題ですよ!」
「宝石を買うお金があったら民を豊かにすることに使うわ! そもそもいきなり大聖女って言われても、私今までそんな魔法?みたいなもの、使えたことがないし……」
私がそう言うと、今まで父と騒いでいた母が突然呆れた顔になった。
「聖女の力が発現するのは、十七歳の誕生日を迎えてからよ? 家庭教師に何度も教わっているはずよ! フィオレリアったら、どうせ鍛錬に夢中で話を聞いていなかったんでしょう?」
「うっ……そ、そうなのね……」
周りの神官たちが、母の言葉にうんうんと頷く。
どうやらこの場に私の味方はいないようだ。
「では大聖女様、早速ですが、今後の話をいたしましょう。ゲストルームにご案内します。こちらへどうぞ」
神官の一人が、ニコニコとした穏やかな笑みでそう言いながら、聖堂の重厚で大きい扉を開ける。
私は、その神官のもとへ勢いよく駆け寄って____全力で聖堂から逃げ出した。
三十六計逃げるに如かずよ。
「え、だ、大聖女様!?」
「ごめんなさい! 私には無理です! このまま実家に帰らせていただきます!!」
「実家に帰っても逃げ場はないんじゃ……」
後ろを振り返りながらそう叫んで、前も見ずに全速力で走る。兄がなんか言っているけれど気にしない。
神官たちが慌てて追いかけてくるけれど、日々鍛錬をしている私の足には適わない。
このままなら逃げ切れる……と思った、その直後だった。
____ドンッ!
「きゃっ……!?」
「うわっ!?」
……曲がり角から突如現れた男性にぶつかった私は……。
____思いきり、その男性を押し倒してしまったのだった。


