本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました。
 この扉が開けば、私達はいよいよ夫婦として誓いを立てることになる。

 ユージン様のことが好きな私と、ビアンカのことが好きな彼が、永遠の愛を誓うのだ。

「皮肉ね……」

 つい、思っていることが口から溢れてしまった。
 けれど、ユージン様はそんな私の独り言にも気付かなかったようだ。

 何やら深刻そうな顔をして、何度も深呼吸をしている。

 ……緊張されているのかしら?

 なんて、そんなわけないわよね。
 きっと、ビアンカの前で私と愛を誓うことが、重荷になっているだけだわ……。

 ____どうして、こうなったんだったかしら。

 私の初恋は、間違いなくユージン様だった。
 彼の初恋も、私であればよかったのに。

 ……なんて、考えるだけ無駄ね。だって、ビアンカは可愛くて、あんなに良い子なんだもの。

 私なんかじゃ敵わない。
 ずっと昔からわかっていたことじゃない。

 ____リーン、ゴーン……

 新郎の入場を知らせる、鐘の音が聴こえてきた。

 私はチラリと、彼の方を見る。
 彼は深く深呼吸をしてから、キリッとした表情で前を向いた。

 扉が開き、彼が先にバージンロードを進んでいく。
 その手は、微かに震えていた。
 ……その震えと緊張が私に対するものじゃないことなんて、言われなくてもわかっているけれど。


 私も、もうすぐ父と共に入場して、途中からは彼ともバージンロードを歩くことになる。

 ……父は気を遣っていたのだろう、少し離れたところで待機をしてくれていた。

 けれど、ごめんなさい。
 私と彼の間には、お父様が期待するようなものは、何もないんです。

 ____扉の奥からフワリと花の香りが漂ってきて、思わず私は目を瞑る。

 すると、まるで走馬灯のように……これまでの思い出が脳裏を駆け巡り始めた。

 ***

 ____私が彼と初めて出会ったのは、沢山の花が美しく咲き誇っているユージン様の実家の庭だった。

 確か、私が十歳、ユージン様が十一歳。
 そして……ビアンカが八歳の時だった。
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