軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
「安藤軍医っ!」
「どうした、二ノ宮」
「軍を……辞めてしまうんですかっ!?」
「ああ」
二ノ宮は頭を抱え込んだ。
「病院はどうするのですかっ! 某では、安藤軍医の代わりなんてとてもっ……」
将臣はポンと、二ノ宮の肩を叩いた。
「お前ならできる。その腕前は、私が一番よく知っている」
その言葉に、二ノ宮は息を飲んで目を見開いた。
「……ありがとうございます」
将臣は少しだけ、口元を和らげた。
「それと、一つだけ忠告だ」
「はい?」
「風呂に入れ。髪も切れ。軍服も洗え」
二ノ宮が眉をひそめる。
「な、急に何ですか!?」
将臣は苦笑した。
「もうすぐ……高官の令嬢との縁談が舞い込んでくるかもしれんぞ」
「某に、ですか!?」
自分の鼻頭を指さす二ノ宮。
「少しは身綺麗にしておけ」
二ノ宮は声をあげて笑った。
「ははっ! そんな冗談を言うのは安藤軍医くらいですよ! 大抵の令嬢は某の姿を見ただけで逃げ出しますって!」
「どうだろうな」
将臣はそれだけ言い残すと、晴れやかな顔で歩き出した。