軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
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朝、凪が打ち水をしに外へ出ると、少し離れた将臣の仮設医院の前に、人が溢れかえっていた。
(開設してまだ一週間も経たないのに……あんなにたくさんの人が……)
柄杓を持ったまま、凪は立ちすくんだ。
後ろから、木製の長椅子を運んでいく男たちの会話が聞こえてくる。
「貧乏人も分け隔てなく診てくれる医者だなんて、本当にありがたいよな」
「だが患者を一人で捌くのも、こりゃ大変だぞ」
「過労で倒れなきゃいいがねぇ」
(……人手が、足りていないんだ……)
水を取り直しながらも、凪の目は吸い寄せられるように医院を追っていた。
男たちが置いた椅子に、集まった患者たちが身を寄せ合って座っていく。
そこへ、白衣姿の将臣が出てきた。
凪の心臓が、ドクンと大きく跳ね上がる。
将臣は手伝いの男たちに深く一礼すると、手前の患者を温かく中へ招き入れた。
(少し前まで、私もあの人の隣で手を貸していた……)
凪の顔が、段々と陰りを帯びていく。
振り向き、一人で立つ麒麟堂の暖簾を見上げた。
「ここを……私一人で……」
父・源一郎がいてくれるからこその自分だ。それは重々わかっていた。
(私の苦労の何倍もの重荷を……将臣様は一人で背負おうとしている……)
「……そこまでして……なぜ……っ」
柄杓を握る手に、ぎゅっと力がこもる。