軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
「先生ーっ!」
遠くから明るい声が響いた。
幼い子どもと、その手を引く母親が近づいてくる。
「あ……!」
凪の目が見開かれた。
「この前の……脱水の……!」
「元気になったんだな」
将臣がすぐに目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「先生!」
子どもが嬉しそうに破顔する。
「水、ちゃんと飲んでるか?」
「うん!」
母親も深く頭を下げる。
「先生方のおかげです。本当にありがとうございました」
「それはよかった」
将臣が立ち上がると、母親が凪へ向けて微笑んだ。
「それから……今日は『結菓子』を買いに来たんです」
「結菓子を……ですか?」
「この子が噂を聞いて。人を元気にしてくれるお菓子だから、食べたいとうるさくてね」
母親が温かく笑う。
将臣の動きが止まり、噛み締めるように目を伏せた。
凪の目にも、熱いものが込み上げてくる。
「……はい! すぐにお包みしますね!」
凪は弾んだ声で、二人を店内へ案内した。