軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
凪は離れの部屋の縁側から、庭の松を眺めていた。
「奥様。これで最後になります」
遠藤と伊東が、最後の荷物を運び終える。
「重い荷物を運んでいただいて、ありがとうございました」
凪は頭を下げた。
部屋の隅には、兄の形見である薬研も置かれている。ようやく、すべての荷物が揃った。
「では、これで失礼いたします」
「あっ、待ってください」
凪は薬草を包んでいた風呂敷を開いた。
「お渡ししたいものがあるんです」
取り出したのは、小さな包みだった。
「これは『結菓子』というお菓子です。よかったら召し上がってください」
「ありがとうございます!」
遠藤と伊東は嬉しそうに受け取った。
「お疲れでしょうから、甘いものをどうぞ」
「ありがたくいただきます」
二人が頭を下げる。
「こちらこそ、ありがとうございました」
凪も笑って頭を下げた。
二人が部屋を出ていく。
静かになった部屋で、凪は薬研へそっと手を伸ばした。
兄の形見が、今度こそ自分のもとに戻ってきた。
凪は薬研を撫でながら、静かに微笑んだ。