軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
13話 誤読の傷読み



 この日、離れには凪の着物を仕立てるため、着物職人が来ていた。
「軍の慰労の宴がある。そこへ来ていく着物を選びなさい」
 凪の採寸を終えると、将臣は生地を選ばせた。
 将臣の隣で凪はある生地に手を伸ばす。
「私、この薄梅色が素敵だと思います」
 凪は、頬を上気させていた。隣で将臣は静かに呟く。
「……悪くないが、少し地味だな」
「え? そうでしょうか」
「もっと似合うものがある」
 将臣が反物の中から、一枚を選び出す。
「……これだな」
 それは淡い藤色だった。
「私には、華やかすぎます」
 凪は手を小さく振って謙遜する。
「いや、お前はいつも控えめすぎる」
「さすが旦那様でございます。奥様にお似合いの色をよくご存じで」
 職人も小さく頷いていた。
 凪はじっとその生地を見つめた。
(こんなに高貴なお色が、私に合うと言ってくださるなんて)
 凪は、姿勢を正した。
「私も気に入りました。これでお願いします」
(大事にされている。本当にありがたいわ)
 凪は自分の胸元へ当て布をする。出来上がりを想像して、笑顔が弾けた。
(……可愛い)
 将臣は、一瞬、顔を赤らめる。
(ここはきちんと言葉で伝えねば!)
 将臣は一度咳払いをする。そして、口から出たのは、
「……思ったより、小柄なんだな」
 だった。
「将臣様の背が、お高いだけです」
 凪は鈴を転がしたように笑った。

 職人を見送り、部屋に戻る際、凪は将臣を呼び止めた。
「これ、お礼です」
 差し出された手には、結菓子がちょこんと乗っていた。
 将臣の頬が緩くなる。
「ちょうど、食べたい頃だったんだ」
 凪から受け取ると、それを大事に握りしめた。
「では、私は外回りのお掃除をしてきます」
 その足取りは軽かった。

 将臣はやってきた結丸を抱き上げ、薬草の畑を見ていた。
「……私は情けない男だ。いつも、肝心な言葉が言えんのだ」
 結丸が慰めるように、そっと将臣の手を舐めた。






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